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一年分自分より早く生まれていることを考慮しても、相手ほど成長できるとは今更思わない。昔はさほど変わらなかったはずなのに、中学の頃だったか桁違いに成長した隣を歩くその人は今や同年代の人と比べても大きい部類に入るだろう。

「どした?」

部活後家に帰る道を一緒に歩いて5年が経過する通り、自分も運動はやってきた。なのに身長にこれだけの差が生まれるのは流石に不公平だと思ったっていいじゃないか。

「や、」

じっと見つめ続けていたせいか、?マークを掲げた相手が首を傾げてこちらを見る。

「どうでもいいことなんだけど」

視線が交差するギリギリのところで目線を下げた。

「…クロの身長なんかむかつく」

にもかかわらず写ったのは背に浴びた夕日が何倍にも伸ばした影。何倍も伸びているそれだって、隣の大きさには敵わない。
言うつもりはなかった言葉はポロリと口から溢れ落ち、予想通り一拍後小さな笑い声が鼓膜を揺らす。

「それは研磨が食わねぇからだろ」

「食べてるよ」

というか食べないとクロ怒るじゃん。口を尖らせて小さな反論。じろっと見上げた視界には悪戯めいた笑顔。を予想していたのに、少しだけ目を細めた相手が写る。

「研磨が」

「お、わ」

認知を理解する前に付加をかけるのは卑怯ではないか。ずん、と頭上にかけられた重みは、どうやら相手の大きな手のひららしい。

「でかくなりたいのは構わないけど」

ぐしゃ、と髪を乱していく指は掴んでみても止まらない。それより大きさをより実感する結果となるのだから、本当にもともこもないと思う。

「ちょ、クロ」

「そのせいで研磨からのトス上手く受けれなかったり」

機嫌の悪い声で厳正するも、重ねられた声に抵抗が止まった。

「膝の上に乗せて抱き締めたり、寝落ちした研磨をベッドに移動させたりそのまま一緒のベッドで寝たり?あと、」

表情が見えないくせに発せられる音はあまりに優しく内容が入ってこない。受け止めきれずに言葉は切れて、その時頭上の重みが消える。

「こう言う事、簡単にできなくなんのは嫌だなあ」

肩を掴まれ額に感触。おまけに小さなリップ音が聞こえた。

「、」

離れていく、と解ると比例して置かれた状況が頭に入ってくる。唇を当てられたカ所に熱が集中。いつもはたいして気にもならないその行為に今日は頬までもが熱くなる。

「ぁ、」

何か言おうとしても言葉が続かず戸惑った。もとはと言えば、相手の表情がいつもと少し違ったせいなのだ。

「な?」

うつむき固まったままの自分に、相手がぽん、と手のひらを乗せた。小さく弾んだ感触に思わず顔を上げて相手を見る。

「…む、かつく」

写ったのは、初めに思った通りの悪戯めいた相手の笑顔。落ちた言葉は本心だ。

「むかつく」

「こらこら、二回も言うな」

台詞に対してのその表情は、なんというか腑に落ちない。顔を背けて足を早めると背後の影と高さが並んだ。

「クロ」

「ん?」

近づいてくる影は自分を追い越していく。

「…身長、やっぱこのままでいい」

隣からまた笑い声が聞こえた。








∵爪先立ち






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