ダウンタイム | ナノ










※医者パロ






白を基調とした建築物の中を歩く。足音はわりと響かないが、時間が時間なため周りに誰もいないこの環境は、ドラマみたいだなんて心が少し踊った。
関係者以外立ち入り禁止、いかにもそういった雰囲気な扉を開けるのは自分がその関係者だからだ。前のソファーを見れば見覚えのある後頭部。自然に口角がゆっくりと上がる。

「お疲れ様、月島せんせー」

「、」

振り返った顔はよろしくないはないが、昔と違って焦りはしない。それよりも反応があることに喜びを感じて近づいた。

「なにそれ」

「だってみんなそういうよ?」

そっと横につめてくれる、そんなところが不器用だ。勿論その好意に甘えないはずもなく、隣に座って相手の方を向いた。

「お前に言われると馬鹿にされてる気しかしないんだけど」

「馬鹿にしてはないけど、俺もツッキーの方がいいかなー」

ふふ、っと響く笑い声は1人分だけだけど、別に空気が重くなるとかそんなことはありはしない。ずっと隣をキープしてきた。学生時代と変わらない眼鏡姿にまたもや顔が緩んでしまう。

「かっこいい、なあ」

「主語がなくてもここまで伝わるものなんだね」

容姿だけを見ていってるんじゃない。白衣にその顔と身長に、それだけを見てよってくる女の子は沢山いる。でもそうじゃなくて、昔からかっこいいのだ。

「ずっと憧れだから、俺にとって」

なんだってそうだ。初めて会ったときからどうしても仲良くなりたいと思った。バレーのプレイをみて深まって、試験結果を見てまた深まって。どうしようもないぐらい相手を求めた。

「医者って聞いたときは流石に驚いたけど」

「まさか追いかけられるとは僕だって思ってないよ」

今となれば笑い話。やりがいも感じている。だけど当時は頑張った。無理をしやすい相手を止めるのが自分じゃなくなるなんて怖すぎて、がむしゃらに勉強した。

「居場所が俺以外になったら嫌だから」

「そんな予定どこにもないけどね」

ただただ真っ直ぐな口調だけど、お互い後になって恥ずかしくなるものだ。変わらない、っていうのは間違いで、すごく柔らかくなったと思う。

「これからも?」

「これからも」

異論なんてあるはずない。





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