「…っ、ん…」 熱っぽい吐息を漏らす男を何処か冷めた気持ちで眺めていた。よくもまあ、物好きな。疲れるから早く終わらせろ、とは言外に息を吐きながら身を捻ると、男の身体がびくっと反応した。 この変態。 それでも連動するように自分の身体も高められていくのは健康の証か。目の前の男によって勝手にもたらされる快楽を、抗いもせず、かといって歓迎もせずただ受けていた。 伊達に回数をこなしてるだけではないらしい。彫刻の様な身体は汗を滴らせ熱を帯びて動きを止めない。芸術家ならさぞ興奮するだろう光景。 若いな、と思う。若さはただ、ひたすらに強い。しかし後は無くしていくだけだ。それと知らないのもまた若さだろうか。 「気持ちいいかよ」 「だ、まっ…れ」 決して何も変わりはしない。 なんて奇妙な行為。 自分自身、最初から拒絶はしなかった。どうでもよかった。それが歳を重ねるうちに矜持もなにも失ったせいなのかは分からない。ただ、そういうことに関して頓着しなくなったのは確かだった。 「頑張れ」 せいぜい頑張れ。頑張って、追いかけろ。 そう思って、考える。何を? 目の前の快楽を?持たない経験を?流れ去ろうとする時間を?何処にいるか自分でも分からない俺を? 顔をぐっと歪めて睨め付けてくる男のその歪んだように真っすぐな情熱も、俺には強すぎる。 けれど、 「ころす」 ああ、今のはいい。 身体が今までに無いくらい反応を示した。殺すと言われて感じるなんて我ながら変態だなと思う。その笑みが気に入らなかったらしい男が、追い詰めるように動きを速めた。 そうだ、頑張れ。追いかけろ。そして俺を殺しにこい。 次の瞬間、心を読んだかのように男の手が首にかけられた。ゆっくりと力が込められていく。それに俺は笑って、目の前に晒された男の太い首に手を伸ばした。 |