オレだってもう十五だ。 女の子に興味が無かった訳ではない。ましてや男に興味があった訳でもない。ただひたすら、彼自身に惹かれただけ。オレにはそれが重要だった。 「半助さん」 「……」 夏虫鳴く蒸し暑い夜、狭くて軋む家。何もないこの家には、けれど色んなものが詰まっている。そしてあの頃とは違う体、違う感情で、オレは彼を押し倒していた。その体に跨がって見下ろした端正な顔は、歪んでいる。いつもは柔和で穏やかなそれが見せる、ちっとも似合わない表情。ねぇ、どうしてそんなに苦しそうなの?もしかしてオレのが移っちゃった? 「…土井せんせ」 「……なんだ」 「ズルイですね、先生」 「あぁ……だから止めておくのが得だぞ」 「その手には乗りませんよ」 貴方はとても優しい。だからオレはこんなにも泣きたくなる。オレは貴方に、こんな顔をさせたい訳じゃない。 「…きり丸、」 「はい先生」 「……ごめんな」 「やめて下さいよ」 違うんです。そんな言葉を言わせたい訳じゃないんです。今とは違う繋がりが欲しい。今とは違う居場所が欲しい。一番頑丈な鎖が欲しい。繋がれるのはオレであり、貴方であって欲しい。そう望むのは欲張りですか?オレが唯一、本当に欲しいと望んだものは貴方だけなのに。それさえも許されないのですか?オレはもう何も失いたくはないのに。何ひとつ。 「…すまない」 「そうじゃなくて」 「…きり丸…」 断ち切れない絆に、断ち切りたい関係。部屋の隅でゆらゆらと頼りなく揺う火は丁度、今の二人に似ている。その灯りに照らされた傷みの目立つ髪に口付けを落として、この熱をその耳に注ぐ。 「抱いて下さい」 今更ひねくれた台詞なんて、珍しくないでしょ?ねぇ貴方は今、色んな事を考えている。それはきっと全てオレの為のもの。でもだったら、オレの為だと言うのなら。貴方の心に感じ、応えて下さい。そしてどうかひとつ残らず… 「貴方の全てをオレに下さい」 それ以外もう何もいらない。誰に許されなくてもいい。 先生、貴方が好きです。 だからどうか、オレと繋がって |