痛む身体も無視して、もうすっかり日の沈んだ街を駆けた。
すぐに息が上がって苦しくなったが、そうせずにはいられなかった。


今回はいつもより“あれ”が酷く長く続いた。
だから気を保てなかったのだ。
だから、手を取ってしまった。
あの男に…知らせてしまった。
知られては、いけなかった。
また…己の弱さのせいでこんなことに…


「兄さん…」


御守りのように、大切な言葉を呟く。
大丈夫…。大丈夫だ。
微かに残った温もりを振り切るように頭を振って、無理矢理思考を切り替える。
そして思った。
やるなら早いほうがいい。










口止めを、しなければ。
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