睡眠も食事もろくに取っていない体に夏の日差しが容赦なく突き刺さり、流れた汗がふらつく足元に落ちた。
まるで追い立てるかのような蝉の声は幻聴だろうか。
徐々に目の前が靄がかったようになり、遠ざかっていく後ろ姿を掴もうと伸ばした手は空を切った。


「…元就」


それはあまりに遠く、あまりに朧げすぎた。
突然、視界が大きく揺らいだ。
崩れていくのは世界か自分の方か。
遠ざかる意識の中で最後に見た空の色は、灰色だった。
どこか遠くで、誰かの悲鳴を聞いた気がした。










ここにはもう、誰もいない。

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