運を使い果たした感がしないでもない。
早速入った教室で指定された席は一番後ろ。これはもう自分に遅刻してください、サボってください、と言っているようなもんではないか。いや決してそんなことはないのだろうが。そんな風に素直に喜べない自分が何とも悲しかった。だがとりあえず今はそうした邪念を置いて時間まで一眠りしようと自分の席に向かったのだが。そうしている間にもその違和感は相変わらず、



「………」



何となく予想はしていた。してはいたし、気にしないようにしていた。が、流石にこの容赦ない視線は予想外で、そのうえ不快だった。如何せんここは男子校で、集めるのは野郎共のそれのみだからである。でもまあ、分からなくはない。確かに俺の髪は銀色だ。それは認める。でもこれ、正真正銘生まれつきだ。どうせ信じてもらえねぇから言わねぇけど。そしてこの左目にした眼帯も原因の一つだろう。しかしこれにも海より深い事情があって…


「って、あーもう面倒くせ…」


考えるのを放棄して机に突っ伏せば、すぐに睡魔が迎えにきた。










それから入学式も終わって再び教室に戻ってくると、ほどなくしてホームルームが始まった。今は担任教師らしき中年の男が教壇に立って何やら話している。若い女教師が担任、などという儚い夢はやはり見るだけ無駄だったらしい。往々にして男子校というのはこういう切なさがつきものなのだ。うん、わかってた。


「えーとりあえず、委員やらなんやら決めなきゃならんからなー学級委員だけ決めて、後は任せるからなー…じゃあ、毛利」
「はい」
「やってくれるか」
「…はい」


おーおー適当だな、この担任。その方がこちらにしてもありがたいのだが…


「なぁ、こいつトップ合格の奴じゃね?」
「ふーん、知らねー」


そう話しかけてきたのは前席の伊達政宗という男で、彼は右目にだが、これまた自分と同じように眼帯をしていた。朝から今までの短い間に同じように好奇の視線を分かち合った政宗とはすぐに気が合って、お互いの眼帯の理由も話したりした。俺の理由とは違い、彼に右目はないらしい。


「では、各委員を決めていく」


教師と入れ替わりに教壇に立った毛利と名指しされた生徒は、やけに冷たい声で言った。確かに頭は良さそうだが性格は見るからにキツそうだ。


「入学式であれ、なんつーの、新入生代表の挨拶みたいなの言ってただろ」
「はて」
「お前寝てたな」
「寝不足でさ」
「Ha!先が思いやられるな」
「うるせぇ。んな事よりさ、帰りにメシ食ってかねぇ?」










今まさにそこで起きてる事なんて、その時の俺にはどこか遠くの世界の出来事のようにしか感じられなかった。
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