シケた面してんなぁ、と言う呆れ声で我に返った元親はぼんやりとした頭で現状を思い出した。今は本来自習時間であったが、じっとしていれば悶々としてしまう思考を振り払いたくて、教室を出て屋上に逃げ込んでいたのだった。珍しく政宗もついて来てかったるそうにイチゴミルクのストローを銜えている。ちょうど日陰になった場所に座り込んではいたものの、夏の日差しは痛いほど眩しかった。教室に居れば冷房はきいているのだが、そういう環境では余計に思考の沼に嵌ってしまうので抜け出してきたのだ。しかし結局はまた答えの出ない思考へと沈んでしまっていたらしい。教室を出る時に見た、無理に気を張った様な元就の後ろ姿が頭に浮かんだ。


「この青空は残酷だよなー」
「やることねぇとそうも思えるが…歪んでんなぁお前」
「…お前はさぁ、どうして俺と一緒にいてくれんの」


はぁ?とこれ以上はないと言うほど呆れたような声が頭に響いた。頭がおかしくなったのではないかと本気で疑っているような表情を見せた政宗だったが、少ししてからやれやれといったように溜め息をついた。元親はそんな友人をぼんやりと眺めながら、抑揚なく続けた。


「あんまり一緒にいるとよ、俺らそーゆー関係に見えるらしいぜ」


今度は一瞬ぽかんとした政宗だったが、しかし何となく事情を理解したようだった。頭の回転が速く察しがいいらしい彼は、その長所を自分では短所と見做しているらしい。


「Ha!とんだimaginationだな」


嫌悪感を露に、持っていたパックをぐしゃりと握り潰した途端、まだ残っていたピンク色の液体が飛び出して思わず笑ってしまった。当の政宗はため息も漏らして頭を振った。それからまた沈黙が落ちたが、それは二人にとって苦にはならないものだった。グラウンドから聞こえるボールの跳ねる音や笑い声が、随分と遠くに感じる。


「お前がそんなだったら、俺は毛利の為にもならねぇと思うがな」


突然の言葉に、元親はまじまじと隣の友人を見た。端正な横顔はどこか、どことも分からない場所を見ていた。


「…どういう意味だよ」
「自分の事もろくに把握出来ねぇ野郎が、他人の心配もなにもねぇだろうが」


その通りだと思った。詳しい事情を知らないはずの政宗に核心を突かれ、元親は動揺と同時に納得をしていた。政宗は自分との間にきちんと一線を引いている。そんな風に潔い男だった。だからその言葉が素直に響いた。


「…お前の言う通りだな」
「とりあえず宿題終わってねぇとかで泣きついてくんなよ」
「おぉ…それはたぶん大丈夫。元就いるし」


言いながら元親はこれからのことを考えていた。答えが出ようと出まいと、この週末から夏休みが始まる。


「…お前さ、絶対自分のことに鈍いタイプだな」


政宗に大層可哀相な目で見られながらそう評されても、元親にはもうその声は聞こえていなかった。










人知れず、ひとつの決心をした。

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