時間外労働につき
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スカーには敵と誤解されるわホムンクルス共には喧嘩売られるわマスタング達には大総統との関係を聞かれるわ、最近そんなに良い事がない。にも関わらずちゃんと出張して来てやった中央司令部。顔だけ見せてさっさとホテルにチェックインして早々に横になったのに。
「レノさん!!」
「ふぁ?」
あれ私鍵かけてなかったっけなんで入って来てんだろってか彼女は誰。
寝ぼけ眼をこすりながら必死に考えていると、かなり焦った様子の彼女は私から布団を剥ぎ取った。え、え、え、だから、何?
「あなたがここにいると聞いていたので…職権濫用で鍵を借りて勝手に入りました。お叱りは後で受けますのでひとまず私について来てください!重傷者がいるんです!!」
「ん…と、」
黒髪のショートヘアに、泣きボクロ。軍人で、私を知っていてさん付け。中央の知り合いと言えば。そこまで考えてやっと合点がいった。
「…ロス?」
「そうです、マリア・ロスです!それより早くお願いします…っ」
「ごめん、寝ぼけてた。すぐ用意するから」
パッと身軽にベッドから下りて適当な服に着替えるとハンガーにかけてある白衣に袖を通す。一通り中身の揃っている愛用の鞄を持って玄関で待っているロスに駆け寄った。
「お待たせ」
「こちらです!」
「え、あ、はい」
焦りまくっているロスに必死について行きながらなんとなくあの眼帯爺がどうして私を中央に呼んだのかがわかった気がした。気がした、とゆーか絶対この為だ。人知れずため息をつくと同時に突如ロスが止まったので危うく背中に顔面衝突するところだった。
「ここです、この病院にいるんです」
「一応どんな具合なのか聞いても?」
「斬られた傷に打撲に出血も相当酷いみたいで…とにかくほっといたら死ぬぐらいの重傷者ですよ!」
「あーはいはいわかったからそんな興奮しないの。で、その人はどこに?」
「手術中です」
「……………」
何故私を呼んだんだろう。考えてみるも、よくわからない。うーん、まぁいいや気にしたって仕方ない気がする。とりあえず手術室に急ごう。
「こんばんはー。重傷さんがいるって聞いたんで応援に来たんだけど」
自分でも医療現場に入った瞬間の発言とは思えない。真面目に入ってもどうせ邪魔者扱いだろうと思っての行動だが、返される言葉はきっと帰れ、とかそんなんだろう。まぁそれが普通の対応だし気を悪くしたりなんかせずに、そうなっちゃったらそうなっちゃったで端っこで様子見ておけばいいか。危なくなったら問答無用で手出しちゃえばいいしね、うん。
「よかった!正直私達だけでは処置が追い付いていないんですっ。レノさん、執刀医を代わってもらえますか!?」
「え。べ、つにいいですけど…」
どーゆー事だ!!!
執刀するなんて聞いてないよ私。反射的にOK出したけど、別にやってもいいけど、どんな容態かもわかってないのに。無茶ぶりにも程があるよね。ほんとなら錬金術でパパッと治したいけど、人間の体って複雑で脆いからしくったら取り返しつかないしここはもう腹括ってさっさと終わらせよう、だって眠いし。
「………って君、鋼の君じゃないですか」
東で治療してあげて、中央で手術するハメになるなんて、私と鋼の錬金術師君には何か繋がりでもあるんだろうか。にしても重傷だな、誰にやられた?それは起きてから聞けばいっか。とりあえずこれ以上放置してたら鋼の君が死にそうだ。
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