出張してきます
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「マスタングいるー?」
「…ノックぐらいしたらどうなんだね?」
「やだなぁ、マスタングにそんな物要らないでしょ」
陽気に笑いながら言うと、彼はやっぱりため息をついた。私と話すとマスタングはため息ばかりついている気がするけど、そんなんだと幸せ逃げるぞ。
「珍しいわね、レノがわざわざこっちに顔を出すだなんて」
「あー、うん。その事なんだけど、なんかまた中央で少し厄介な患者さんがいるから来て欲しいと要請があったのでちょっくら行って来ます」
「またかよ?最近多いんじゃねーか?」
「なんだかんだあっちこっちで色々起こってるらしいからねぇ。まー軍が動く程だし、そろそろ大規模な戦争でも起こるんじゃないの?」
「物騒な事は口に出す物じゃないぞ」
「マスタングにだけは言われたくなかった言葉ね」
大総統になる為ならうんたらかんたらほにゃららほにゃらら言ってる人には物騒な事は、なんて言われても説得力なさすぎる。とゆうより、マスタングは私に対して影響力を持っていなさすぎると思う。本人には可哀想だから言わないけど。
「そーいやエド達も中央行くとか言ってたな」
「あらそうなんだ、会ったら挨拶くらいしておくよ。まー、スカーの厳戒態勢も解けてないから私なんかがそう簡単に国家錬金術師に会えるとも思わないけど」
「……レノって国家錬金術師じゃなかったのか?」
「私も国家資格を持っていると思っていたが」
「嘘はダメよ、レノ」
「なにそれ!嘘じゃないし。私国家資格なんて大層な物持ってないからね」
苦笑して答えれば、執務室内にいた3人は疑わしそうな瞳で私を見た。どんなに私を見たところで国家錬金術師ではないし、証拠の銀時計も持ってない。私の錬金術が高評価を得ているのは知っているけど、だからと言って持ってない物を持っていると嘘はつけない。
「一応私、マスタングの部下とゆう扱いなので報告だけしに来たの。明日発つからその準備の為今日は早退させていただきまーす」
「…1つだけ、質問をいいかい?」
「手短にであれば」
「前から思っていたのだが、君はその中央出張を誰に命令されているんだね?私に断りもなく直接君に言っているようだが、一応私も通してもらわないとこちらも困るところがあるんだが」
「そーんな事言って、マスタングの首がはねられちゃうよ」
「………どういう意味だ?」
「だからね、私に中央出張を命じているのはマスタングよりもっとずっと上の地位の人なの」
「少将、か?」
「いえいえ。大総統だったりして」
「…………なっ」
「……えっ!?」
「…は?」
「では、失礼します」
くるりと身を翻して執務室を出る。少し経ってからマスタングやハボックの声が聞こえたような気がするけど、たぶん気のせいだと思う。
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