「黒子を中心に得点を重ねてはいるが、残りの二年生4人は桃井のせいで動きが読まれている。やはり火神の抜けた穴は大きいのだよ」
「…いずれにせよ、やばいっスよ」
まだ前半残り5分。この場面で点差が大きく開き始めようとしている。本当にギリギリのこのタイミングで再びブザーが鳴り、オフィシャルが誠凛のメンバーチェンジを告げる。それにより少しは状況も好転するかという考えが頭をよぎった。
「青峰!!」
「…え、」
「このタイミングで、か」
「今青峰っちが加わったら、正直火神がコートに戻ったところでって感じっスね」
ここからではベンチが見えないので様子はわからないが、青ちゃんが到着したのが周りのざわめきからうかがえる。第2Qはあと1分もない。けど、あたしが桐皇の監督なら迷わず青ちゃんを入れる。
「桐皇学園、メンバーチェンジです」
あと31秒だった。コートに、圧倒的オーラを放つ青ちゃんが足を踏み入れる。煩かったギャラリーが瞬間的に静まり返った。そしてそれは、コート内でも同じ。
「青峰っちに呑まれたら終わりっスよ、誠凛…!」
みーくんも思っていたであろうその一言をきーちゃんが呟く。あとたったの31秒。青ちゃんに点を取られずに終わりたいところだ。
.
←→