少しだけ息をつける展開になって、握りしめていた掌をゆっくりと開く。

「あれ、遊木センパイ?と、緑間っち!?」

「あ、きーちゃん」

「黄瀬っ!?何故気付いたのだよ!?」

「アホスかグラサンて!そして恥ずかしいからソッコー外してほしいっス!」

「なにィ!?」

もしかして気付かれないと思っていたのだろうか。あたしに声をかけられた時点でその考えは捨てるべきだったと思うのだけど。

「あれスか?見たくないとか周りには言ったけど結局来ちゃったんスか?」

「テキトーなことを言うな!」

「ふふ、きーちゃん正解」

「遊木さん!?……っ違う、たまたま近くを通っただけなのだよ!」

「家真逆じゃないスか」

きーちゃんの鋭い突っ込みに沈黙したみーくんはサングラスを外していつもの眼鏡をかけた。あ、持ってたんだ。

「きーちゃんは一人なの?」

「はいっス。まーた遅刻しちゃって」

「バカめ」

「変なサングラスの緑間っちには言われたくないっスね」

「もう外したのだよ!」

「試合はどーなんスか、遊木さん?」

「…うーん。正直、ダメダメ」

「青峰のいない今でさえついていくのがやっとの状況なのだよ」

「あれ、青峰っちいないんスか?」

「青ちゃんも遅刻みたい」

このままでは他のチームと同じように圧倒的差をつけられて負けるだろう。誠凛には期待しているし、食らいついてもらいたいところだけど、桐皇には彼女もいるし。

「まぁ今あの二人が根性見せたじゃないっスか。これからっスよ」

「忘れたのか、黄瀬」

「…桐皇には、桃ちゃんがいるから」

私の教えたことをスポンジのように吸収して、尚且つそのスキルを自身の手で磨きあげた桃ちゃんが。

「中学時代は何度も助けられたが、逆に敵になるとこれ以上厄介なマネージャーはいないのだよ」



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