「それではこれより、誠凛高校対桐皇学園高校の試合を始めます」
結局青ちゃんのいないまま試合が始まる。これはまぁ、なんというかほんとにナメられている感が半端ない。
「…いや、ナメられてる訳じゃないんだろうけど」
「これさえも作戦の内なのかもしれません」
「あえて青ちゃんを遅刻させて誠凛にイケるかもって思わせることが?」
「まぁ、それに青峰が乗ることもありえなければ従うこともありえないのですが」
「どちらにしても、油断を誘えるし桐皇的には結果オーライか」
桐皇ボールから始まった試合は展開が速く、しかもいきなり3Pからだった。
「スイマセン!!」
観客席の通路側にいるあたしにも聞こえるくらいの大きな声で謝った彼はしっかりと3Pを決めた。何故謝ったんだ。にしても、初っぱなからリスクの高い3Pで攻めてくるあたりがかなり強気。…違うか。6番はしっかり水戸部をスクリーンアウトしてるし、もし外れたとしても確実に先制点を奪えるようにしてある。4番の笑顔が薄気味悪く見えた。
「みーくんとはまた違うけど、良いシューターだね」
「速いモーションの割りにフォームも崩れず飛距離も申し分ありません。…が、負けるつもりはないのだよ」
「まだまだみーくんが上かな」
笑ってみーくんを見ると、照れたようにそっぽを向いてしまった。あぁ、中学時代と何ら変わりのないこの距離感が、今はすごく嬉しい。
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