バッシュのスキール音とドリブルの音が響く。半分無理矢理連れて来られたようなもんだけど、案外来てよかったかも、なんて思う自分がいる。少なくともこの練習メニューの組み方はあたし好みだ。

「おっ」

全体を見ていた自分の目が日向の声をきっかけに1年――火神大我を捉えたのを自覚する。この間はふざけた事を、なんて思っていたけどアメリカ帰りなら仕方ないとも言える。あっちで潰れなかったんだ、かなりの実力と精神力の持ち主だろう。

「いや、まだだ!」

右にドライブしたのを珍しく一発で抜かれずにくらいついてる。さすが2年ってとこだろう。けどそれでも火神は焦る事なくトップスピードからのロールをやってのけ、さらにダンクでゴールにボールを叩きつけた。

「……まー、確かに中々だよね」

一般人には到底出来ない技であることに変わりはない。ただ相手をキセキと想定するなら話は別だ。
青ちゃんはそれ以上を簡単にやってのけるだろうし、きーちゃんにもコピーされる。みーくんに至ってはダンクなんてつまらないと一蹴するね。むーちゃんは…まず興味なさそう。あっくんは楽しそうに見てるだけかな。
思考半分に体育館を眺め、どよめきと歓声が沸き上がる中で別のざわめきが起こっているのに気が付いた。体育館に制服の女子が集まるなんて珍しい。

「海常高校と練習試合!?」

「っそ!」

いつの間にか集合のかかっていたらしいバスケ部から大きな声が聞こえて再びそちらに意識が戻る。海常と言えば全国クラスの強豪校じゃない。よく試合してくれるわね、こんな新設校と。…あ、こっちも去年1年だけで関東大会まで行ったんだっけ。

「それに加え、海常は今年『キセキの世代』の1人、黄瀬涼太を獲得したトコよ」

「……きーちゃんが」

ますます面白そうな事。興味が沸かない事もないわ。

「しかも黄瀬ってモデルやってんじゃなかった?」

「マジ!?」

「スゲー!!」

「カッコよくてバスケ上手いとかヒドくね!?」

「もうアレだな…妬みしかねぇ…」

「ヒクツだな!」

「ぶふっ」

ちょ、会話が面白すぎる。てゆーか内容が残念すぎる。1人お腹を抱えて笑って、気付けばバスケ部全員の目がステージに向かっていた。何事かとそちらに目を向けてやっと合点がいく。

「黄瀬涼太!!」

成る程成る程、きーちゃんがいるならこのギャラリーの多さも頷ける。


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