さすがに今日という日は遅くまで寝ていたい本心とは裏腹に早朝から目が覚めたので遅刻することなく試合会場に到着することができた。しかし、見渡す限り人、人、人。

「決勝リーグだしね…」

遅刻魔のあたしでさえ早くに家を出たのだ、観戦にだって気合いが入るのは仕方ないだろう。ため息を漏らしたところで先日知った集団が目の前にいることに気づいた。その中に見知った緑頭はいないけれど。

「高尾、チョロチョロするな」

「へーい。…って、遊木さん!?」

「おはよう、高尾くん」

「おはよーっす!遊木さんも試合観戦っすか?」

「そうだよ」

真後ろにいたのに気付かれたのは何故だろう。鷹の目故なのか、なんてどうでもいいことを考えながら挨拶していると周囲からの強い視線を感じた。そういえば秀徳のチーム自体と会うのは初めてだ。

「おはようございます。誠凛2年の沢井です」

「遊木さんは帝光中出身で真ちゃんの先輩なんすよ!」

「秀徳主将の大坪だ。…緑間の世話は大変だっただろう」

「大変どころじゃねーだろ。つーかその緑間はどうした?」

あの強豪秀徳の、しかも主将の大坪さんと握手できて内心ウキウキだったのだが、大坪さんの隣の金髪が不機嫌そうに高尾くんに尋ねたところで思考が現実に戻ってきた。あたしも気になっていたし、どうしたのかと高尾くんに視線で問うと、彼は苦笑しつつ携帯を見た。

「来たくねーらしーっす」

「あははーブッ殺す」

「悪ぃ、ウチ軽トラ壊れたから」

見せてもらった文面は実にみーくんらしく、『いやなのだよ』とそれだけだった。その後の不穏すぎる発言でみーくんが新チームでも相変わらずなのが伺えて、あたしも思わず苦笑い。

「真ちゃんはいないっすけど、遊木さん一緒に試合観ましょうよ!」

「あー…お誘いは嬉しいけど」

「えー!?」

「高尾、無理を言うな」

正直初対面の、しかも王者秀徳の方々と試合観戦なんて恐れ多い、というのが本音だが大坪さんも高尾くんを止めてくれたのでこれを機にさっさと逃げよう。

「じゃ、またね高尾くん。失礼します」

きーちゃん、今日も観に来てないかな。



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