2軍と1年のゲームがあった翌日、通学中に中村の背中を見つけたので少し早歩きで近付いた。
「おはよ、中村」
「………」
「中村?」
「……………」
少しも反応がない。人を間違えたかと思って慌てて顔を確認したけど、やっぱり中村だった。1年からの付き合いだから間違うはずがない。けど、1年からの付き合いでも、どうして中村が今こんな態度を取ってくるのかがわからなかった。
「しかとですか?」
「………しかとなう」
「喋ったらシカトになんねーよ」
中村の背中をバチン!!と叩きながら朝の挨拶を済ませたのは、川田だった。よかった、これでさっきまでの変な気まずさはなくなるはず。
「い…ってぇぇぇぇ!!!何すんだよ川田!?」
「無防備な背中を見つけたら、叩くのが礼儀だろう」
「日本の礼儀を学び直してこい!!」
「朝、挨拶をされても返さないのが日本の礼儀かよ?」
「お、は、よ、う☆」
「俺にじゃない」
会話に入れないでいると、突然川田が私の背中を押したから中村の前に立つ形になった。
「え?」
「ほら、中村」
「……………」
川田に促されたらいつもなら押し負けるのに、今日の中村はそれでもだんまりを押し通した。
「……中村、悪いことしたんなら謝るし、それじゃ済まないって言うならもう話しかけないけど、ちゃんと理由言ってもらえないとあたしも引けない」
本当は仲直りして、今までと同じように楽しくやりたいけど、中村がここまでなってるんだからそれは無理だよね。
「沢井、勘違いしてるっぽいけど中村はただ」
「遊木!!!」
「はい?」
「今日から名前で呼ぶからオレのことも名前で呼ぶこと!拒否権はない!!」
……突然、どうしたというのか。
「返事は!?」
「あ、うん。わかった」
「よし。………おはよー遊木」
「中村にしてはいい考えだな。俺も便乗しよーっと」
おはよう遊木。川田にも急に名前で呼ばれて頭がこんがらがった。なにこいつら、きもい。
「中村は遊木が1年にとられたから拗ねてただけだよ」
「川田だって言ってたじゃねーかよ!」
「長く引きずるほどじゃない。それに、遊木がバスケ部のマネージャーで、クラスメートなのは変わらないからな」
「………あのさぁ、中村がガキっていうのはよくわかった」
「ちょ、遊木まで!?」
「でも!」
早く学校行かないと、遅刻だよ?
瞬間、中村も川田も走り出した。ズルすぎでしょ!!
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結局苗字で呼んでるのに気付かない中村。
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