もしかして、松谷くんのパスカットからすべてが始まっていたのかもしれない。成功していればそのまま速攻、取れなくても松谷くんは相手の視界から消える訳だ。そこを逆手に取ってんやで松谷くんは走り出していた。でもそれって、もしも誰もオフェンスを止められなかったら確実にノーマークが出来るし…リスクはかなり大きい。それに、この短時間でそれほどまでに味方を信頼することが出来るものなの?
「タイムアウト、2軍」
いつの間にゲームが再開していたのか。気付かなかった………えぇ!?しかも、またこっちが2点取ったところだし!見てなかった…!!
「ナイッシュー青峰!」
「当たり前だろ!」
「決めてなかったら危なかったね」
「あ?」
「赤司が、さ」
「決めなかったらチェンジだな」
「だってー」
「……お、落とす訳ねーだろ」
さっきまでは少しも話なんてしてなかったのに。実力でわかりあったってやつなのかな。こういうのって、男の子はいいよなぁ。
「オイコラ沢井サン!見てたかよオレの実力は!?」
「ごめん全然見てなかった」
「な…っ!?」
ほんとに見てなかったんだからしょうがないでしょ。しかし絶句してしまった青峰のモチベーションを下げる訳にもいかない。
「でもカットは見てたよ。凄かった」
「だろぉ!」
「松谷くんも、読みが鋭かったね」
「あれはもともと話を合わせていた訳ではないのだろう?」
気を遣ってタオルを配ってくれていた緑馬くんの言葉に、松谷くんと青峰は顔を見合わせた。
「してなかったよな」
「そんな気がするな」
「でも青峰の方にボールが行った瞬間、あ、これはイケるって感じたんだよ」
だから走り出した。松谷くんの言葉にスタメン全員が表情を弛ませた。
「確かに、実力は練習の時にわかったしな」
「中身はガキだけどね」
「んだと仁科オマエ…」
「はいはいそこまでにしなよ、二人ともさ」
ほんとに。
いつ、こんなに仲良くなったのかわからない。でも確実に言えることが1つだけ。
タイムアウトが終わり、立ち上がる1年全員を見渡した。
「このチーム、強いよ。2軍にだって勝てるかも!」
「…なんでそこで勝てるって言いきらねんだよ」
青峰にため息をつかれた。いや、言い切れる訳ないでしょ。
「みんなが青峰みたいに自信過剰な訳じゃないんだよ?」
「まったくだな」
「でも、期待しててくださいよ沢井さん」
「ギャフンと言わせるくらいしてきますんで!」
なんとも頼もしい限りである。でも…2軍も次からは本気で来るだろうなぁ。一気に自信なくならなかったらいいけど。
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