このスポーツジムには何回か来た事があるし、必死に記憶を手繰り寄せてなんとか更衣室につくと桃ちゃんはさっさと着替えてプールの方に駆けて行ってしまった。あたしに「絶対着替えてくださいね!」と念を押して。
どうやらプールでは誠凛メンバーが筋トレをしているらしい。…着替えたくない。
「……でも、桃ちゃんが拗ねるしなぁ」
着替えなかったら拗ねるだろうし、仮に着替えたとしてあたしがあっちに顔を出さなかったらそれはそれで拗ねるだろう。…選択肢は一つしかないと思う。まぁ、桃ちゃんには今まで散々迷惑かけてきたし、それのお返しと思えば水着くらい………恥ずかしい、けど。
「……………はぁ」
ため息をつきながら着ていたパーカーに手をかけた。
× × × × ×
「あれ、桃ちゃんは…?」
着替えて嫌々ながらもプールに足を踏み入れたはいいが肝心の桃ちゃんが見当たらない。誠凛のやつ等がごちゃごちゃしてる分余計わからない。仕方ないのでとりあえず目についたリコに聞いてみようと近付くとすごい負のオーラが出ていた。
「………リコ、どうかしたの?」
「どーしたもこーしたもないわよ!ちょっと胸が大きいくらいで………遊木!!?なんでいんの!?」
「桃ちゃんに誘われてちょっとね。…女は胸じゃないよ、うん」
「そうよね!………裏切り者ぉぉぉ!!!」
慰めたつもらが逆効果だったみたいだ。あたしの胸をチラ見したリコはさらにダメージを食らったようでその場に体育座りで座り込んだ。
「まったく…あ、日向、」
「沢井……いい!!」
「ごめんなさいリコ、すごい気持ちわかる」
あたしの立場ならまだしも、リコの立場でそんな事みんなに言われたらいくらあたしでも挫けるよ、うん。
「てゆーか、桃ちゃんどこに行ったの?」
「あぁ、あの子ならあっちのプールサイドで黒子と話してるよ」
「…黒ちゃんと、か」
邪魔はしない方がいいかな。
そう判断してあたしも近くにあったベンチに座った。
「日向達はさ、これ以上午後練増やされたくなかったら大人しく筋トレしてた方がいいわよ」
ニコリと笑って言えば、彼等は一斉にプールに飛び込みスクワットを開始した。うーん、この光景大分気持ち悪いわ。なんか、ムサい。
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