「よし、じゃあ三人でもんじゃ食べに行きましょう」
「あ?」
「へ?」
「もんじゃです、もんじゃ。来る途中であったんで、食べたいなって」
三人で行きましょう?
まず笠松さんに首を傾げる。頷く。きーちゃんに首を傾げる。頷く。
どうやら2人とも付き合ってくれるらしい。
「この雨じゃどうせすぐには帰れねぇだろうしな」
「そーいえば腹減ったッスねー…」
「そうと決まればさっさと行こうか。笠松さんも」
きーちゃんの手を取り、先頭切って歩けば笠松さんの声が聞こえた気がした。
「なんか…キャラ違くね?」
キャラを保つより食欲の方が大事なんです。
×××××
俺焼くの上手いんスよー!なんてきーちゃんが言ったけど、お店では大体焼かれたのが鉄板に乗せられるから焼くのが上手い下手は関係ないと思うんだ。
笠松さんも同じ事を思ったらしくそれを指摘したのか、きーちゃんのテンションが一気に下がったのがわかった。大丈夫かな、なんて心配したのも一瞬。目の前に置かれたブタ玉にきーちゃんのテンションは急上昇。
「現金な奴…」
「それがきーちゃんの良いところでもある、と思う事にしましょう」
苦笑しながらもきーちゃんに続き笠松さんと2人でもんじゃを切り分ける。口に運んで咀嚼して、あ、美味しい。なんて呟いた。飛び込みにしては上々。
「にしても、今日の試合はほんとに心臓に悪かったッスよね!」
「…ま、確かにそうだが、内容的にはハイレベルだったしな」
「あたし的にはみーくんが心配、かな」
「…大丈夫ッスよ、遊木センパイ!緑間っちは何気に図太いッスから!」
「………ふふ、そうかも」
小さく笑ってまたもんじゃを口に運ぶ。
そうして少しの沈黙の後に、きーちゃんがおもむろに口を開いた。
「思ったんスけど、」
「何?」
「なんで遊木センパイは笠松センパイの隣なんスか!?」
「え?」
「だってオレの方が仲良いのに!笠松センパイずるいッス!」
「うっせ、他の客に迷惑だ。どこに座ろうが沢井の自由だろうが」
「それは…そーッスけどー…」
むぅ、ときーちゃんが頬を膨らませる。なんか可愛い、なんて言ったらまた拗ねるからやめておこう。黙々と食べる笠松さんにぶつぶつ不満を言いながら食べるきーちゃん。ちぐはぐな2人に思わず笑ってしまった時だった。
急に入り口が騒がしくなったと思ってそちらを見れば。
「お」
笠松さんも気付いたらしく小さく声をあげる。その呟きにきーちゃんも入り口を振り向いた。
いたのは、誠凛バスケ部の面々。いち早くバ火神がこっちに気付き近寄って来た。
「黄瀬と笠松に沢井!?」
「呼び捨てかオイ!!」
「……………」
「ちっス」
色んな意味でイラッと来て睨んでやれば、目が合った。
「……………」
「………何だ、ですか」
「……………別に」
下手な敬語に視線を外す。わかってはいたけど、こいつ本物のバカだ。
「沢井まで、なんでここに…?」
「誠凛の試合観に行ったら一緒になったから」
簡潔に答えながらもんじゃをつつく。そうしていると席が足りるか足りないか微妙な感じらしく若干困り顔のお店の方に、笠松さんが声をかけた。
「もしあれだったら相席でもいっすよ」
その結果。
「なんなんスかこのメンツは…。そして火神っち、なんでドロドロだったんスか」
「あぶれたんだよ。ドロはほっとけよ。っち付けんな」
「食わねーとコゲんぞ」
黒ちゃん、きーちゃん、笠松さんにバ火神。あまりメンツにトイレに逃げ出した。
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