第4Qが始まる。どうやら黒ちゃんがコートに戻るみたいだ。
「おっ、黒子っち出てきたっスね」
「火神をいきなりぶんなぐった時はどーなるかと思ったけどな」
「そしてバ火神が黒ちゃんを殴った時は飛び降りようかと思いましたけどね」
「遊木さん…前科があるんスから冗談になってないんスけど」
「…あ、やったねそう言えば」
「お前黒子の事になると行動力半端ねぇよ」
海常で観客席から飛び降りた事なんてすっかり忘れていた。むしろ今回もやればよかったかな。でもそれじゃ解決にはならなかった訳だし、バ火神は後でお仕置きって事で。
それより気になるのはコートの中。途中までフルで出ていたとは言え、黒ちゃんの存在がハッキリ見えすぎる気がする。…何か策でもあるんだろうけど。
「緑間っちのシュート、もう誰も止められないんじゃないスか?火神っちもあれじゃ…」
「…いや、」
そうでもねぇだろ。笠松さんの言葉に被って、みーくんのシュートをバ火神がはたき落とす。でもまー、ハッタリってとこか。
「みーくんが“もしかしたら”を危惧してシュートに向かわなくなるかもしれない、か。…最早賭けね」
「けど秀徳に勝つには何とか相手の得点を抑えてこっちがそれ以上を取るしかねぇだろ」
「大丈夫っスよ、なんてったって黒子っちっスからね!」
「訳わかんねぇよ黙ってろ」
「なっ!?ヒドいっす!」
「うるせー」
隣の2人の相変わらずな様子を横目で見ながら苦笑する。でも根拠のないきーちゃんの自信、なんとなくわかるんだよね。黒ちゃんならって思わずにはいられない。
その時―――視界から黒ちゃんが消えた。
「っえ…?」
驚いているのはあたしだけじゃなく、秀徳の10番も。…成る程、逆の誘導だった訳ね、今のは。けどすぐに居場所に気付いた10番はすぐにパスの方向を察知してスティールを入れる。…が。
目にも止まらぬ速さのパスが通り過ぎ、10番の手を弾くが軌道は逸れない。バ火神はそれをきっちりとキャッチして、立ちはだかったみーくんの上からダンクを派手にぶちかました。
「スゲェエエ!なんだ今の!?」
会場中から歓声があがる。それぐらいの価値が今の一連の動作にはあっただろう。それに、あれは…あのパスは。
『キセキ』の子達しか捕れなかったパス、だから。
「てゆーか、ガス欠寸前で大丈夫なんスかアイツは!」
「まぁ…今のはムリしてダンクいく場面でもなかった。って見方もたるな」
「そもそもダンクってあんまりイミないものですしね」
「派手好きなだけスよ、アイツは!」
「だろーな」
「いやそれはきーちゃんもだけど」
「遊木さん!?」
「けど、じゃあ全く必要ないかって言えばそれも違うんだよ。点数は同じでもやはりバスケの花形プレーだ。それで緑間をぶっ飛ばした」
「…点数がどうこうより、今のダンクはチームに活力を引き出した。言いたくはないけど…ファインプレーよ」
「まー、もうそろそろ火神も跳べねぇとは思うけどな」
そう、何よりの問題はそこだ。みーくんに点を取りに行けと秀徳の監督が指示を出せば、止められる手が誠凛にはもうない。…でも、もしそれを逆手に取れれば、事態はまた展開するでしょうね。
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