「一ケタ差!?」

「この差なら分かんねーぞ!!」

火神の覚醒によって誠凛に来る波は大きい。…けど。

「そろそろ終わりね」

火神の目の前でシュートモーションに入り、ボールを放ったみーくん。ブロックする相手は…いない。
目の前にいながら、火神は動くことさえなかった。

「何やってんスか…!」

「突然自覚したものを乱用するからよ」

「…ガス欠、ってゆう事っスか?」

「あぁ。おそらくアイツはまだ常時あの高さで跳べるほど体ができてねぇ…。それを乱発して孤軍奮闘してたからな…」

「それにこれ、2試合目でしょ。ほんっと、波が来たと思ったら」

「 ? 」

「…ガス欠は1人だけじゃねぇってことだ」

コートに立っている全員の息が荒いどころじゃない。今胸をどつかれたら間違いなく過呼吸を起こすだろう。

「っ、あのバカ…」

不安に思いながらコートを見ていれば、ボールが回った瞬間にゴールしか目に映らないかの如く火神が切り込んだ。
ここは24秒フルで使ってチャンス狙うとこでしょ。カウンター食らって返せない。これじゃジリ貧に変わりはない。頭を抱えたくなるまま第3Qが終わった。

「っはー。なんか見てるこっちが疲れるっスね」

「そうなってこその試合だけどよ、それにしてもここはハンパねぇな」

「……」

「遊木さん?黙り込んでどうしたんスか?」

「…ん?あぁ、いやなんでも、」

ない。の言葉は何か大きな音で遮られた。

「黒子君!?」

黒子って、え…黒ちゃん!?驚いて真下を見れば、火神に胸倉を掴まれている黒ちゃんの姿があった。でも、頬が赤いのは火神の方。

「みんなで仲良くがんばりゃ負けてもいいのかよ!?勝たなきゃ何のイミもねぇよ」

「一人で勝ってもイミなんかないだろ。『キセキの世代』倒すって言ったのに、彼らと同じ考えでどうすんだ」

(…黒ちゃん)

相変わらず、シビレる事言ってくれるなぁ。

「今のお互いを信頼できない状態で仮に秀徳を倒せたとしても、きっと誰も嬉しくないです」

「っ、甘っちょろいこと言ってんなよ!」

今度はさっき黒ちゃんが殴った何倍も酷い音で火神が黒ちゃんを殴った。

「そんなん勝てなきゃただのキレイ事だろーが!!」

「…じゃあ、『勝利』ってなんですか」

「………」

「試合終了した時どんなに相手より多く点を取っていても、嬉しくなければそれは『勝利』じゃない…!」

「…別に負けたいわけじゃないって!ただ一人できばることはねーってだけだよ」

「つかなんか異論…あるか?」

人知れずほっと息をついたリコが視界に映った。気持ちはわかる。

「そんなん…ねぇ…。いや…悪かった。勝った時嬉しい方がいいに決まってる」

「………バ火神ね」

「え、遊木さ…ん?」

「あんなんバ火神で十分よ。不安要素以外の何ものでもないクセに」

そのクセに、勝利の為の切り札でもあるってコトが気に入らない。



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