意気揚々と出て行った選手達を見ながらため息をつけば、微苦笑のリコが近付いて来た。

「…謝るつもりはないよ。全部ほんとの事言ったつもりだし」

「わかってるわよ」

ちら、と横目で伺えば、リコの瞳にももう迷いはなかった。結局はみんな単純にバスケ馬鹿なだけ、か。

「大丈夫、この試合絶対に勝ってくれるわ」

「………馬鹿」

「えぇっ!?今のは応援するところじゃない!」

「してるよ。リコ含めて、ね。あの子達をここまで仕上げて来たのは他でもないリコ。だったらあんたも立派なチームの一員。だから勝ってくれるなんて言葉じゃなく…勝ってみせるって、言ってくれなきゃ」

自分でもらしくない台詞だとは思ったけど、リコの表情を見ていると言う他なかった。なんか、情けない顔してるし。

「…うん」

「早く行かないと待ってるんじゃない?」

「もー!だから遊木大好きっ!」

「はいはい」

抱きついてきたのを甘受して、その頭を撫でてやるとリコはすぐに離れた。
今度は、監督のカオ。

「絶対に遊木に勝利を届けてみせるわ!」

そう言ってダッシュでコートへ戻って行く彼女に苦笑をひとつ。それから、

「頑張れ」

負けるな。面と向かっては言えない言葉を口にしながら少しの間ロッカールームでぼーっとする。
…あたしも、もしかしたらみんなの前であんな情けない表情になってたのかもしれない。逃げて、逃げて、逃げられなくなって。
でもバスケは大好きだった。

「…今も好きだけど」

そう、あたしも結局はバスケ好きなバスケ馬鹿。それは今も昔も変わらない。変われるものじゃない。だったら……。
鉄平からの連絡に、今度は何かしら返事を返せる気がした。とりあえずこの試合が終わったら今までのメールを開いてやろう。
そんな事を考えている内にコートから聞こえた歓声でハッと時計を確認すれば、ハーフタイムなんてとっくに終わっていた。きーちゃんあたり心配してそうだし、さっさと戻らなきゃ。
あ。

「おは朝占いの事言うの忘れてた」

…まーいっか。あんまり誠凛にとっては関係ないだろうしね。



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