いつの間にか取られていたらしいタイムアウトが終わる。黒ちゃんは替えられるかもと思っていたけど、どうやら続行みたいだ。ま、あそこで替えたら試合は終わったも同然だっただろうしナイス判断。それにそんな弱気はリコらしくない。
動かない試合は、黒ちゃんのパスがスティールされた事によって動き出した。

「またスティール!!」

「ダメだ!誠凛の魔法のパス完全に沈黙ー!!」

速攻を出させないのはさすが、と言いたいところだけど。今のところ完璧に秀徳ペースね。それに、

「黒子っちがムキになってる…!?」

「うん。らしくないよね、黒ちゃんが同じ事でって」

確かに振り切られたように見せた10番は上手かったけど、マッチアップしてたならそれがフリだって気付けたはずなのに。

「あいつ…」

「え?」

笠松さんの声で試合に意識を戻すと、センターラインを越した辺りでみーくんがパスを受けていたところだった。火神は何の警戒もなく3Pラインの内側。あー、ダメだ。
一気にシュートフォームに入り、放たれたボールは迷う事なくキレイにゴールに吸い込まれる。これを一瞬の動作から予測出来たとは、さすが笠松さん。

「緑間っちもやってくれるッスね…」

「そうだな。ゴール下まで下がっとけば、どんなカウンターにも対応する事が出来る」

それ以前に2点と3点の差は大きい。いくら同じ本数入れたって1点ずつ確実に差は広げられていく訳だし。日向のクラッチモードも序盤からフルでは使えないから誠凛の3Pの確率は低い。それにゴール下も秀徳の方が有利みたいだし、簡単に放ってカウンターは食らいたくない。

「…地力の差、スね」

「いくら爆発力のあるチームとは言え、試合経験はまだ浅い。ま、1Qだし予想は立てたくねーけどよ」

「…」

こんな時にとってつもなく不謹慎だとは重い。でも言わせて欲しい。
笠松さんかっこいいっ。
言ってる事は正論だけ、それに安易に勝敗をつけようともしない。大分好みな人なんですけど。

「っ、え?」

変な事を考えていたせいかコート内で起こった事に反応出来なかった。その間に火神はゴール下まで走り込み、外れたシュートをダンクで押し込む。
…驚いた、3Pはこの伏線か。急に3Pとか打つから頭沸いたのかと思ったじゃん。

「1人アリウープ!?」

「あいつ…!」

「…やるじゃん」

だから何って話だけど、派手なプレイは決まればチームのモチベーションアップに繋がる。これで少しは流れを引き戻せれば、

「なんて、簡単に行く訳ないか」

特に相手が強豪校であればあるほど、4番の冷静さは必要不可欠だしね。



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