不覚にもアイツの前で泣いてしまってから大分経った。とりあえずあの日は考えとく、なんて言って帰ったけど、正直どうすればいいかわかんない。…わかってる、気もするんだけど。とりあえずなんか癪だから毎日来る鉄平からのメールと電話は全部シカトしてある。
そんで今日誠凛はみーくんとこと試合な訳である。正直正邦あたりで終わるかとも思ったけど、そこは2年の意地、とでも言っておこうか。

「わー、もう2分も経ってるし…」

別に遅く出たつもりはないんだけどなー。内心でぼやきながらとりあえず観やすい席を探して手すりの近くまで降りると、派手な黄色が視界に入った。

「あ、遊木センパイ!」

「やほーきーちゃん。と、こんにちは笠松さん」

「ぉ、おう。お前も観に来たんだよな?」

「…まぁ、そうですね」

「遊木センパイ、ここ空いてるッスよ!座ってください!」

「ありがと、お言葉に甘えるよ」

席を探してるのがわかったのか、きーちゃんがエナメルを置いていた席を空けてくろたので座らせてもらう。
やっと落ち着いてコートを見れば、火神とみーくん、黒ちゃんとこないだみーくんと一緒にいた子がマッチアップしていた。

「………へぇ」

黒ちゃんにわざわざ当てるんだ、何かあるんだろう。10番の子に注意を向けながらも試合の展開を見守る。
――黒ちゃんが動いた。10番は彼がどこに消えたのかと視線を巡らせているので、やっぱ何を持ってる訳でもないのか?と首を傾げていると、読みが外れた事に気付く。

「黒子のパスが……!?」

「失敗!?」

コートからも観客席からも驚愕の声があがる。

「やってくれるねー、秀徳の監督さんも」

今の動きからして、10番の彼は誠凛の伊月以上のモノをもっているんだろう。…鷹の目を。
黒ちゃんのミスディレクションは黒ちゃんを見ようとする視線をそらすもの。けど鷹の目は全体を見る能力だ。黒ちゃんに注目している訳ではなく、コート全体の動きの一部として黒ちゃんの動きを捉える事が出来るとゆー訳だ。

「つまり透明少年の十八番はあっちの10番には通用しないって訳か」

「…そっスね」

「でも、それだけで終わる黒ちゃんでもないでしょうし」

あぁ見えて熱い男だもんね、黒ちゃんって。



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