しばらく歩いて辿り着いたのはストリートコートの隣にあった少し開けた場所。なんとなく歩いてなんとなくバスケに引き寄せられるなんて、やっぱり二人ともバスケ馬鹿みたい。
ベンチの背もたれに座り、普通座るところに足を置いてきーちゃんがゆっくりと黒ちゃんに話し出す。

「…てか、こうしてちゃんと話すのも久しぶりっスね」

「…はい」

「………」

「………」

早くもネタ切れかよ!
黒ちゃんは基本話さないんだからここはきーちゃんがリードするべきなのに。あーもう世話の焼ける後輩だなぁっ。

「そーいえばさっきみーくんに会ったんだよね」

「……!」

痺れを切らしてあたしが呟けば黒ちゃんは敏感に反応した。一瞬息を詰め、それから困った表情に。

「正直あの人はちょっと苦手です」

「あはは、黒ちゃんは昔からそうだったよね」

「…けど、あの左手はハンパねースよ、ジッサイ。かに座がいい日は特に」

「…はい」

この二人を黙らせる力をみーくんが持っていて、逆に言えばこの二人だってみーくんを黙らせる実力を持っている。『キセキ』は確かに個人の突出した才能がチームを勝利へと導いていたけど、それにはもう1つ大きな要因がある。
――― 全員のポジションが違ったこと、だ。
神様の采配か何かは知らないけど、みんな違うポジション同士最高の技術を持っていた。だからこそそれ程大きな仲違いもなくここまで有名になったんだ。…お互いに利用価値のあるプレイヤーだったから。

「ま、今日は観にきただけらしースわ。それより…黒子っちにフラれ試合にも負けて、高校生活踏んだり蹴ったりっスよ〜」

「会えただけマシでしょ」

「そうなんスけど!…でも、ダメ元でも一応マジだったんスよー!?」

軽い調子で言っているけど実際は落ち込む程度じゃ済んでないはず。その証拠にきーちゃんの言葉を受けた黒ちゃんの表情は浮かない。

「……すみません」

「本気にしなくていいんだよ、黒ちゃん。きーちゃんは少し頭が…ほら、バカだから」

「バカってなんなんスか!?」

ヒドイっス!なんて涙を流しているきーちゃんにゆるく笑いかければ、少しの間があいた後に泣き顔にも似た苦笑を返してきて、なんだかあたしが泣きそうになった。

「…てゆうか、オレは理由が聞きたかったんスよ」

きーちゃんは一度言葉を区切り、今までいじくりまわしていたボールを黒ちゃんに投げる。

「なんで…全中の決勝が終わった途端、姿を消したんスか?」

……ん?なにその話、知らないんですけど。



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