「てか遊木センパイは他の人達と帰らなくてよかったんスか?」
沈黙を破り声をかけてきたきーちゃんを見上げる。太陽に反射する金色が妙に眩しかった。
「最初から別行動だしねぇ。それに様子見て来てって黒ちゃんに頼まれちゃったし」
「黒子っちが…」
「きーちゃんトコの4番くんも心配してたみたいだよ?戻らなくていいの?」
みーくんの登場ですっかり忘れていたが、海常が解散したのを見た覚えはない。もしもきーちゃん待ちだったらあたしまで負い目を感じるじゃないか。
「……戻らなきゃ、ダメなんスね」
「ダメに決まってんだろがっ!!!」
突如きーちゃんの横腹に飛び蹴りをかました海常の4番くんに目を丸くする。まさかのグッドタイミング。もしかして機を狙っていたのではと思わせるほどの迷いのなさだった。
「きゃ、主将…痛いっス…」
「悪ぃな、何から何までウチのが世話んなっちまったみたいで」
「スルー!?」
相手が誰でもきーちゃんのきーちゃんらしさは健在らしい。小さく笑いながらあたしは頭を下げてきた海常の4番くんに首を横に振ってみせた。
「気にしてないので、大丈夫ですよ」
「マジで悪ぃな。…よかったら、名前教えてくんねぇ?」
「あたしの、ですか?」
「おう。オレは笠松幸男だ」
「…沢井遊木です。これからもきーちゃんをよろしくお願いしますね」
右の壁際で拗ねていたきーちゃんを立たせて笠松さんの方に向ければ、きーちゃんは居心地悪そうに身動ぎして笠松さんからの視線を受け止めている。
「あ、そうだ。さっさと解散すっから戻るぞ!」
「はいっス!てか痛いっス!!」
胸ぐらを引っ張られ、次いで首根っこに持ちかえられてきーちゃんはずるずると引きずられていく。…さすがにそこまでしなくてもついて行くと思うんだけどな。
「遊木センパイ!すぐ行くんでそこで待っといてください!一緒帰りたいっス!」
「はーい」
聞こえていないだろうけど小さく言葉を返し、見てわかるように手を振ってみせる。
にしても笠松さん、か。ちょっと暴力的だけど良い先輩だよね。…先輩、だよね?←
何にしてもあの人ならきーちゃんも道を見失わずに新しい場所へ飛び込めるだろう。よかったなんて思うのは大きなお世話かもしれないんだけどね。
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