「なぜ、ここに…?」

「んー、ここに来たのは色々と成り行きなんだけど、それ以前に今日の練習試合観に来てたからね」

もしかして、黒ちゃんってみーくんがいるのがわかってたからあたしに頼んだの?もしもそうなら黒ちゃん…恐ろしい子!
とか脳内で楽しい事してるわりに現実の空気は重い。

「緑間っちも知らなかったと思うんスけど、遊木センパイって誠凜に通ってるんっスよ」

「…何?と言う事は、バスケ部のマネージャーなのですか?」

「あたしが?ないない!たまたま二人の練習試合の事知ったから来ただけでバスケ部とはほとんど関係ないよ」

嘘は言ってない。けど勧誘が続いてあいつが帰って来たら…どうなるかは気分次第ね。

「てゆーか、みーくんはなんでここにいるの?」

「こいつ興味ない興味ない言いながら観る気満々で来たくせに来たら試合終わってたみたいな!」

うーけーるー!!
目に涙を浮かべながら笑うリヤカーの子をみーくんが睨む。ってことはどうやら図星だったらしい。…もしかして予選で秀徳に当たったりするのかしら?

「…とにかく、遊木さんがマネージャーでないのならハッキリ言わせてもらおう」

結局リヤカーの子を蹴りで黙らせたみーくんはきーちゃんに向き直り、眼鏡を押し上げた。

「オレ達が誠凜に負けるという運命はありえない。残念だがリベンジは諦めた方がいい」

「………」

随分堂々と言ってくれるのね。確かにあたしはマネージャーじゃないけど、同じ高校の奴がいるのにそこまで言わないでしょ、普通は。

「遊木さんは予選を観に来るのですか?」

「ん?あ、行くよー多分」

「…成る程」

「え?」

何が成る程なんだい、と尋ねる前にみーくんは踵を返していた。突然歩き出したみーくんに慌ててリヤカーの子がついていく。

「…また、お会いしましょう」

「…おー、またね」

見えていないのを承知で手を振り、その背中が見えなくなるまでなんとなくきーちゃんもあたしも無言だった。



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