「きーちゃんは、バスケ楽しんでる?」
笑って見上げた顔は本当に呆けていた。
「黒ちゃんは自分の楽しいバスケを見つけたんだよ、きっと」
最初はただバスケが好きで、ただバスケが楽しくて始めたのに。目的が刷り変わったのはいつだったか。
「きーちゃんにも見つかるから。そんなに寂しい顔して、焦らなくて大丈夫だから」
人間は変わり続けて生きていく。進化を止めない生き物。体格であれ、感情であれ、何かしらの発達を遂げていく。きーちゃんはそのきっかけを黒ちゃんに貰って、そうして未知の世界の扉の前に立った。どう変わるかっていうのはきーちゃん次第だけど。
「………やっぱ、わかんないことだらけっス」
「うん」
「でも…遊木センパイの言うことは外れたことないっスからね。信じるっス。多分…オレ、変わる」
「そうだね」
きゅぅと握られた手のひらの力を感じながら笑みを溢せば、やっぱり少し寂しそうではあるけどきーちゃんもいつも通りの笑顔をくれた。
「帰ろっか」
「はい」
ゆっくりと手を引いて歩き出す。
こーゆう時にあいつを思い出すのは何でだろうか。あの赤い道を、手を引いて歩いてくれたあいつを。
あぁ、なんだか無性に逢いたくなるじゃん、バカ。
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