黒ちゃんとてっぺーにマネージャーをやることを告げて1週間経った。今日からてっぺーは練習に参加するし、あたしにとっても運命の日だ。

「ねぇ、あんたホントにそれで練習する気なの?」

「気合い入ってていーだろ?」

「いーだろじゃなくてさ…」

もう何と言葉をかけていいかわからずため息しか出なかった。近くなってきた体育館からは日向の大きな声が聞こえるしてっぺーはこんなだし、大丈夫なのか誠凛バスケ部。

「ウィース」

「あ」

「さあ、練習しようぜ」

「…」

「…」

「…」

「だからやめとけって言ったじゃん…」

体育館に流れた痛いほどの沈黙はあたしにはいたたまれなかった。リコの顔が半端なく冷めてる。他の部員だって何と声をかければいいか悩んでいる様子だ。

「えーと…久しぶりだな、木吉…」

「オウ!」

「いやなんでユニフォームなんだよオマエ!?やる気あんのか?」

「ひさしぶりの練習でテンション上がっちまってよ」

「あんのか!!」

なんのコントだよと思いながら日向に無理矢理着替えさせられているてっぺーをチラリと横目で見る。小さく息をついて、それから未だにてっぺーを冷たい目で見ているリコに近づいた。

「リコ」

「え、遊木なんでここに?てか、アイツなんなの?」

「てっぺーはもとからあんなだよ」

「…確かにそうね」

ため息をつくリコに苦笑しながら、あたしも本題を切り出す。

「リコ、あたしマネージャーしたいんだけど」

「あーうんうんマネージャーね、いいわよ………マネージャー!?」

やけに納得が早いなと思ったが、どうやら右から左に受け流しただけらしい。すぐに意味を咀嚼したらしいリコは目を大きく見開いてあたしの肩をがっしりと掴んだ。ちょ、痛いし怖い。

「ほんとに!?ほんとにやってくれるの!?」

「うん。桐皇との試合見たら、燃えてきた」

「遊木ー!」

「よろしくね、カントク」

感極まったように抱きついてくるリコを受け止めてヨシヨシと背中をさすってあげた。たぶん、カントクとしての重圧は凄かっただろうし、やらなきゃいけないことだって沢山で。それをずっと一人でやってきたリコは、それでもカントクだからあんまり選手には頼れなかったんだと思う。リコはそんなに弱い人間じゃないけど、それでも少しでもあたしがリコの背負うものを軽くしてあげたかった。



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