「…じゃあ、ボクは先に」
「待って黒ちゃん」
「え、」
「黒ちゃんも聞いてて」
病院で伝えようと思っていた時よりも幾分心臓が落ち着いている。それに、ちゃんと笑えてる気がした。
「てっぺー、前あたしに言ったよね」
「何か言ったっけ?」
「てっぺーが退院して、バスケ部に戻ったらあたしにマネージャーしてくれって」
「…!」
「…あぁ」
「いいよ」
すんなりと出てきた言葉に安心した。ほっとするあたしとは逆にてっぺーも黒ちゃんも目を丸くして心底驚いているけど、そんなあたしと二人の温度差がなんだが可笑しかった。
「でも遊木さん…」
「あたしも変わりたい」
「遊木お前、……いいのか?」
「何回言わせるの。…いいよ」
瞬間、てっぺーの表情が驚愕から一変して満面の笑顔になった。黒ちゃんは神妙な顔を浮かべているけど、あたしのこの行動が少しでも黒ちゃんの変わるきっかけになればいいなと思う。
「黒ちゃん達の手伝い、あたしにもさせて」
「…ありがとうございます」
少しだけ、黒ちゃんが笑んでくれた。ほんの少しだったけど、今のあたしにはそれがどうしようもなく嬉しかった。
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