結果良ければなんとやら。都合の良い言葉があるけど、これじゃ話になんない。
右にドライブ、トップスピードからロールしてダンクのおまけ付き。きーちゃんが今目の前でやってのけたのはさっき火神がやったオフェンスと同じ――いや、威力とスピードは火神より上。反応どうこうの次元じゃないのよ。
…しかしながら、これは。

「……。あんな人知りません」

「へ?」

今回ばかりは黒ちゃんに同意せざるを得ない。まさかあたしも想像の上を行かれるとは思ってなかった。

「正直さっきまでボクも甘いことを考えてました。でも…数ヶ月会ってないだけなのに彼は…」

予想を遥かに上回る早さでキセキは進化している。…少しイメージを修正する必要がありそうね。きーちゃんがこれなら、みーくん青ちゃんにむーちゃん…ましてやあっくんなんてどれだけ伸びてるの。所詮あたしは発展途上の彼らしか知らなかったってことか。

「ん〜…これは、ちょっとな〜……」

実に困った表情をしながらきーちゃんは「拍子抜け」と火神に告げた。まったくもってその通りだけど、その一言だけで体育館には緊張が走る。

「やっぱ黒子っちください」

きーちゃんはキセキの子達と違う憧れを黒ちゃんに抱いてるからその誘いも頷ける。それにきーちゃんはまだ他のキセキよりチームを理解出来てる子だとあたしは思ってるから。

「マジな話黒子っちのことは尊敬してるんスよ!こんなとこじゃ宝の持ち腐れだって」

静かな体育館にきーちゃんの声がやたらと大きく響く。そんな中で黒ちゃんも静かに口を開いた。

「そんな風に言ってもらえるのは光栄です」

誰もが、息を呑む。

「丁重にお断りさせて頂きます」

「文脈おかしくねぇ!?」

「……相変わらず退屈しない子達ね」

小さく笑みが溢れた。黒ちゃんの返答は容易に想像出来てたけど、ね。

「そもそもらしくねっスよ!勝つことが全てだったじゃん。なんでもっと強いトコいかないの?」

「あの時から考えが変わったんです。何より火神君と約束しました。キミ達を…『キセキの世代』を倒す、と」

―――まさか、ここまでとは。
黒ちゃんがこんな大胆なことを言えるまでに火神の力が大きいとは思ってもいなかった。

「…やっぱらしくねースよ。そんな冗談、」

「きーちゃん」

帰ろっか、と。無意識に作った笑顔を称えて呟けばきーちゃんは歯ぎしりをしながらも小さく息を吐いてコートに落ちていたブレザーを拾った。誰も何も言わない、言えない中、火神が言葉を漏らす。

「ったくオレのセリフとんな、黒子」

「黄瀬君、ボクが冗談苦手なのは変わってません。――本気です」

返事はせず、きーちゃんはあたしの腕を引いた。その表情は苛立ちと言うより寂しさの方が滲んでいて。
火神と黒ちゃんは確かにナイスコンビになるでしょうけど、解せないのも事実、か。


あたしもキセキの思考が嫌いで桃ちゃんに全部あげて逃げたんだっけ。


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