「バスケってのは万能型選手のスポーツだ。選手一人のプレイの幅は広いほどいい。乱暴な言い方をすればパスを出せる点取り屋が5人いればオッケー」

「………」

まさか一人で話している訳ないしリコでもいるのかと少し体育館を覗けば、そこにいたのは黒ちゃんだった。

「まあ実際には人間得手不得手があるから役割ってもんがあるし、スペシャリストはシックスマンに置いたりする。が、キミほど極端なスペシャリストは見たことがない。あそこまで徹底して一つのことだけ極めたのは驚異的だ」

体育館の壁に背中を預けて話だけを聞いていた。とても割り込める内容じゃない。黒ちゃんにとって、アイツの言葉は必要なんだ。

「けど…そこが限界って、自分で決めつけてねぇか?」

「―――!」

ガコン、ボールがリングに当たると同時にアイツの不満そうな声が聞こえたのでシュートしたのはてっぺーだろう。そこは決めないと黒ちゃんに示しがつかないじゃん。思わず笑ってしまった。

「そんだけ自分を客観的に見て、割り切ってプレイしてるのは大したモンだよ。けど、割り切り過ぎかもよ?」

帝光ではそんなこと誰も言わなかった。それに、誠凛に入ってからも黒ちゃん個人のスペックの低さがあったせいで誰も、カントクのリコでさえパス以外の道を示すことはなかった。けど青ちゃんに今のままでは通用しないことを痛感させられた今、何が必要なのかを説いているのは何故かてっぺー。やっぱ誠凛にはアイツが必要なんだと、思った。

「オレらまだコーコーセーだぜ。もっと自分の可能性を信じてもいーんじゃねーの?…なんて、ひとりごと言ってみたりしてな。また来週会おうぜ、黒子クン」

「…あの、アメ…踏んでます」

「あぁあ!?さっき買ったばっかなのに!?」

まったく、カッコつけるなら最後まで気を抜かずに通せっての。苦笑しながら体育館の壁から離れる。そうして、今やっとここについた風に見せかけた。

「もう、やっぱここだったのね…」

「遊木」

「遊木さんが、なんで体育館に?」

「あ、黒ちゃん。あたしはそこのバカに用事があってさ」

指を差された本人は何のことかわからないという顔をしてあたしを見ていた。



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