結局試合は誠凛の巻き返しなんて起こることもなく、112対55という圧倒的大差で敗退した。でも、あたしは思うのだ。こんなにも実力差を見せつけられて、敵わないのだと体感させられて、それでもなお諦めず、闘志を失わずに全力で戦い抜いた誠凛はこれからどこまでも伸びていける。強くなれる、と。

「こんな試合を最後まで観るなんてオレもどうかしているのだよ。じゃあな黄瀬。遊木さんも、また会いましょう」

「またね、みーくん」

「早っス!遊木センパイも緑間っちも、この結果にちょっとはショックとかないんスかー?」

会場の出入り口に向かっていたみーくんはそんなきーちゃんの発言に歩みを止めて顔だけ振り返った。

「オレの心配などするぐらいなら黒子の心配をした方がいいのだよ」

「え?」

「スコアなんてもの以上に…青峰に黒子のバスケは全く通用しなかった。精神的にも相当なダメージだろう。しかも誠凛はまだ若いチームだ。この修正を一晩でするのは容易ではないのだよ」

残り2試合に影響がなければいいがな。それだけ言い残して、みーくんは会場を出て行った。残されたあたしときーちゃんには沈黙だけが残る。正直、こんな状況で次の試合に切り替えるなんて誠凛にはまだ出来ないだろう。

「言っちゃ悪いけど、誠凛の夏は今日で終わり」

「遊木センパイ、自分の学校なのにそんなこと言っちゃダメっスよ〜」

「あたし達も帰ろ」

何故か自分のことのように半泣きになりながら訴えてくるきーちゃんの腕を引いてあたし達も試合会場を後にした。
でもね、きーちゃん。あたしだって今日の試合を観て何も感じなかった訳じゃないんだよ。今までの誠凛の試合を観て、今日の敗けを観て、あたしの奥深くに押さえ付けられていたものが熱を帯びた。怖がって、逃げてるだけじゃ何も変わらない。過去は変えられないけど、でもその過去に縛られて身動きできなくなってる自分を変えることは出来るんだ。

だってあたし、バスケが大好きだから。



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