第4Qが始まったが、勝負は既についていると言っても過言ではないだろう。それよりも、あたしにはこの期に及んでコートを走っている火神が理解できない。リコは、何をしているのだろうか。黒ちゃんのパスは全てカットされて桐皇の得点に繋がる。火神も青ちゃんにまったく対応出来ていない。それどころか。
「誠凛メンバーチェンジです」
やっと火神にメンバーチェンジが言い渡される。コート内で火神が口答えしているが、会場全体に響き渡る大声でリコが叫んだ。
「いいから戻りなさい!!」
「…火神っち、どうしたんスかね?勝てないから次の試合に向けて温存、とか?」
「お前は誠凛をバカにしているのか、黄瀬」
「むしろ尊敬してるっス」
「足」
「え?」
状況のわかっていないきーちゃんに静かに火神の不調を伝える。
「痛めた方の足を庇いながらプレイしたせいで、反対の足に極端な負荷がかかってたの。もしオールで走ってたら選手生命にすら関わったかもしれない」
「それって、残りの試合は…」
「あたしなら絶対出さない」
リコも同じ決断を下すと思った。これを言ってはなんだが、誠凛はまだ1、2年しかいない。誠凛高校としての来年があるし、何より火神にはそれよりもっと先にまでバスケをする未来があるのだ。今を理由に体を壊してほしくはない。
「…それでも、試合は続くがな」
騒ぐギャラリーとは対照的に、コートは静まり返っていた。
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