「っちょ、遊木!あれ、遊木!?」

きーちゃんが現れ、何故かリコはあたしを呼び始めた。訳がわからないけど、出ていかないのは可哀想。てかキチガイにしか見えなくて今も十分可哀想だし。
可愛い後輩にも逢いたいしね。

「そんな叫ばなくてもいるし」

「遊木!」

「はいはい、わかってるからそんな連呼しないで」

「なんで彼がここにいるの!?まさかアンタ、呼んだ!?」

誰が呼ぶか。内心で返しながらリコにデコピンを食らわせ黙らせる。突然入って来たあたしにおどろいたのか一気に静まり返った体育館で黒ちゃんときーちゃんを視界に入れると、あたしはにこりと笑いかけてみせた。

「久しぶりだね、黒ちゃんもきーちゃんも」

「………っ遊木、センパイ…!?」

「同じ学校の先輩だった人をもう忘れちゃった?ちょっと悲しいわよ」

冗談混じりに言えば反応を見せたのはきーちゃんで。他人の目なんて一切気にせずに一目散にあたしに飛び付いた。

「遊木センパイっ!え、誠凛だったんスか?知らなかったんスけど!なんで教えてくれなかったんスかーっ!?」

「黄瀬くんちょっと黙ってください、遊木さんが困ってるじゃないですか。………お久しぶりです」

「黒子っちヒドくね!?」

べしんと黒ちゃんがきーちゃんを叩きあたしから引き剥がす。変わらないなーこの二人は。

「だって誠凛って言ったら桃ちゃんも来そうだったから」

「俺も来たっス!」

「尚更困るんだけど」

苦笑しながら返せばふと黒ちゃんと目が合った。それは何か言いたそうで、でも言わない。そんな感情の現れみたいで。…あぁ、そっか。

「青ちゃんには桃ちゃんがいなきゃダメだからね」

「オレは遊木センパイ゛いないとダメっス!」

「ほんとに黙ってください」

相変わらず黒ちゃんはキツい。きーちゃん限定なんだけどね。泣きに走ったきーちゃんが尚言葉を募らせようとした時。

「っと!?」

どこからかかなりの強さで飛んできたボールをきーちゃんが受け止める。その軌跡を辿ればそこにいたのは、火神大我。

「せっかくの再開中にワリーな。けど折角来てアイサツだけもねーだろ?」

相当血気盛んな様子で。上がりかけていたテンションはいつも通り氷点下まで下がる。

「ちょっと相手してくれよイケメン君」

思わず零れたため息はきーちゃんに対してそんな事を言った彼に対する感嘆か呆れか。
てゆーか、たかだかアメリカ帰りがきーちゃんに勝てるスキルを持ってるとでも思ってんのかな?


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