はち
あの手この手を使いまくり、光は謙也に圧勝。珍しく笑みを見せながらフェンスの向こうを見て自分の勝利を伝えようとして光は絶句。どうしてかと言えば理由は簡単。馨にレギュラーが群がっていたからである。
謙也にテニスボールが飛んで来た。
火曜日、いつものお時間です。
「なー、おねーちゃん光の妹なんやろ?」
「ぇ、あ…おん、そうやで。君は?」
「ワイ遠山金太郎言います!よろしゅうよろしゅう」
手を握りぶんぶんと振り回す金太郎に戸惑いながらも馨はよろしくと笑み返す。その対応がよかったのか金太郎は握った手をそのままに馨の隣に座った。
「遠山くんは、練習せんでえぇの?」
「まだ休憩中やねん!光がえらいおねーちゃんのこと言いよったから、話してみたかったん」
「…そうなんや」
金太郎の言葉的に言われていたことが誉め言葉であるということがうかがえる。出会う前にハードルを上げられるというのはなかなか辛いものがある。
「金太郎はん、練習が始まるさかいコート戻るで」
「ぎーん、ワイまだおねーちゃんと話したいー」
「我が儘言うんやありまへん」
突如現れたはg…スキンの師範に相当驚いたらしい馨は肩を震わせる。しかしその話し方からそう怖い人間ではないのだろうと悟るとすぐに元通りの柔い笑顔に戻った。
「遠山くん、あたしとはまた話せるやろ?先輩困らしたらあかんのやで」
「ほんまにまた話してくれるん?」
「おん。また練習見に来るさかい、そん時に話そうな」
「せやったらワイ、練習行って来る!ちゃーんと見よってや!!」
「おん、わかったでー頑張りぃ」
大きく手を振る金太郎に小さく手をふりかえしながら未だ傍らに佇む師範を馨が不思議そうに見る。それから何か気付いたように慌てて立つと、謝るように頭を下げた。
「すいません、挨拶遅れてしまいました。あたし財前光の双子の妹で財前馨言います」
「気にせんでえぇ。ワシは石田銀や、皆からは師範と呼ばれとる」
「石田さん、ですね。覚えました!」
手を合わせながら幼子のように笑う馨を見て、師範もなんとなく暖かい気持ちになったのか微笑む。和やかな空気が流れた。と、そう思った時。
「銀さんが桃色空気出しとるでぇ、相手は光ちゃんの妹やって!なかなか可愛ぇやないのぉ」
「浮気か、死なすど!」
「黙りや」
やはりこの二人も興味は持っていたらしい。四天宝寺のモーホーダブルスこと小春とユウジ。師範の両方の肩にそれぞれ手をそっと触れているところが気持ち悪いと思ったり違ったり。
「あ、いつも兄がお世話になってます。あたし財前光の妹の馨です」
「わては金色小春言うんよー、見れば見る程可愛ぇ子やないの〜」
「…一氏ユウジや。小春に手ぇ出したらただじゃ済まさへんで」
「……あ、そう言った関係なんですね」
若干目を反らした馨に、小春がちゃうちゃうと手を振って否定する。
「ダブルスで相手をびっくりさせて思うようなプレイさせへんようにこういう役作りしとるだけなんよ、ほんまやないから」
「こは、小春ぅぅぅ!!?」
「なんやねん」
涙目のユウジを見て、あぁそうかと馨は納得した。
(一見金色さんのがそうゆうのやと見せかけてあえてのユウジさんがそうゆう人なんやな)
特にそういうものに偏見を持っている訳ではなく、馨は至って普通にそれを受け止める。良い雰囲気で会話が流れていた時だった。パンパンと手を叩く音が聞こえて皆一斉にそちらを振り向く。
「えぇ加減練習再開すんでー、そろそろ謙也が再起不能になりそうやしな」
指で示された先には、ラリーをしながら随分と毒舌を吐かれているらしい謙也が見えた。今の彼は常に言っているようなスピードの欠片もない。
「馨はん、また」
「じゃーまた来るさかい、わてのこと忘れんといてなー」
「小春に色目使うたら死なすからなっ!!」
なかなかに濃いレギュラー面々である。コートに戻って行く彼等の後ろ姿に目を細めながら、馨は楽しそうに笑った。
―――――
はい終わりー
なんやもう書けまてん(´`)
いやがんばるけど←
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