ろく





思い立ったが吉日。
その言葉通りに馨は白石に部活を見に来ないかと誘われたその日に見にいくことに決めていた。後で後でとまわしていると面倒臭くなって行かないに決まっている。少なくともものぐさな光と双子の自覚はあった。
当たり前だが、光は馨が部活に来ることなど知らない。





火曜日、いつものお時間です。
side.馨





あー眠い眠い。そう思いながら過ぎた午後からの授業だったけど休み時間やHR中などはたびたび昼休みのことで話しかけられ、ぶっちゃけ五月蝿かったんは言わん約束やね。

「………部活やりよんの?」

あれで?
ちらほらとギャラリーが見えるテニスコートの中、部員達…否、きっとあれはレギュラーなんだろう。平部員はあっちのコートで真面目に練習しよるみたいやし。しっかしおかしいやろ。

「ぉ、馨ちゃん来てくれたんやな!」

「馨!?!?」

「こんにちは、白石さん。さっきぶりですわ」

「なんでおんねん馨!さっさと帰りや!」

にこやかに白石さんに返していると光が慌ててフェンス越しやけどあたしに駆け寄って来た。ちゅうか名前だけでどんだけ反応すんねん、シスコンっちゅうより光はなんや将来ストーカーとかしてそうで怖い。

「白石さんが来てえぇっちゅうから」

「俺来てえぇとか言ってへんやろ?」

「なんでいちいち光に許可とらなあかんの?折角光のかっこいいとこ見よう思て来たんに」

「………っ」

あ、天秤傾きおったで。あたしを帰らせるのと部活見てってもらうんで、若干部活見てってもらう方が沈んだ音や。

「えぇやないか、財前。馨ちゃんが謙也にあないこと聞きよったんは、財前のことをもっと知りたかったかららしいんや。せやったらちゃーんと見せたらな」

「そうっすけど…」

「財前がちゃんと見せたったら謙也と深く関わることもなくなるんやで?それにレギュラーみんなもう馨ちゃんに興味持ちまくりなんやから隠そうっちゅうんが無理な話なんや」

「………しゃーない」

よっしゃ!!内心激しくガッツポーズを取りながら白石さんに目を向ければ、光の後ろで舌をちらりと見せながらピースサインを送ってくれとった。こっちはあからさまには出来ひんからとりあえず感謝を込めて笑顔を向けといた。

「せやけど、見るんやったら途中で帰るんはナシやで。1人で帰らすんは危ないさかい、一緒に帰ること。でけんのやったら帰り」

「勿論最後まで見て光と一緒に帰るに決まっとるやん」

「わかっとるならえぇんや。あとは…出来るだけ日向は避けとき」

「ぇ、なんで?」

「折角の白い肌が焼けてまうやろ!!」

「………ぁ、おん、そうやな。…わかった」

頷けば光は満足したようにコートに戻って行った。ちゅうか日陰言うてもそない簡単に見つかる訳……うわぁなんてえぇとこに大きな木があるんやろ。しかもベンチ付きとかもう光が仕組んだようにしか見えへんけどさすがにそこまではないやろ。どっちかっちゅうとあることわかっとって言うたんやろな。

「馨ちゃんっ??」

「あ、謙也さん。……なんや、昼休みはすいませんでした」

久々に実感した光のシスコンぶりに少し戸惑いながらもまだえぇやろとコートを観察しよったら金パを発見。謙也さんもあたしに気付いたらしくすぐに近寄って来た。足速っ。

「いや、気にせんでえぇよ。相当守ってくれとったし…」

「あの後、だいじょぶやったんですか?」

「ん?あー……心に消えん傷が3つくらい残ったくらいで済んだし軽い方やな」

「……すみません」

「謝らんといてや!ほんま馨ちゃんには感謝しとるんやで?」

慌てて両手を左右に振る謙也さんを、やっぱり可愛ぇなーなんて思てしまった。でも光とは後で少し話し合わないかん感じ。消えんような心の傷て。

「練習見るん?」

「あ、はい。謙也さんに迷惑かけんでちゃんと自分で光のこと見らなあかんと思たんで」

「…せやけど、俺の愚痴も聞いたってな」

「当たり前っすわ!」

即答すれば謙也さんは驚いたみたいやったけどすぐに破顔してそんならよかったと笑ってくれた。

(……わ、なんやろ。体温上がった気ぃする)

「馨ちゃん見てくれとるなら頑張らなあかんな!応援しとってや」

「勿論!頑張ってください」

「おん!!」

手を振りながら元気よくコートに走って行った謙也さんは、光に足かけられて転んどった。………光。





―――――

柳生のLAZER BEAMを聞きながら
作業は出来ないことが判明。




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