じゅはち





千歳に宣戦布告した翌日、火曜日の昼休み。謙也が馨に確実に逢える時間というのは昼休みしかない故、想いを伝えるならそこでと決めていた謙也は心臓が暴走しているのを耳の奥で聞きながら放送室の扉を開いたのだった。





火曜日、いつものお時間です。





「あ、謙也さん」

「邪魔しとぉばい」

「…ほっんま邪魔や!ちゅうかなんで自分がここおんねん!!?」

謙也は激怒した。
必ずかの邪知暴虐な千歳千里を倒さねばならぬと決意しt…さーせん調子乗りました。

「なんか急にちーさんが放送部の見学したい言うて…」

「いかんかった?」

「あかんに決まっとるやろ!さっさと出て行きや!!」

「な…んかすいません。あたし謙也さんが来るまでならえぇかなと思うて…」

「そこまで言うこつないたい。別に馨が悪いっちゃないっちゃき」

俯く馨を千歳が慰めた瞬間、最近短くなってきた謙也の堪忍袋の尾が切れた。ついでに額の血管もいくつか切れたらしい。

「俺が言うとるのは千歳や!自分が出てったらえぇだけなんやから、さっさと出て行き!馨ちゃんには怒ってへんで」

最後だけ声を優しいものに変えて謙也が言う。それが面白くなかったのか千歳は若干機嫌の悪そうな顔で椅子を立ち上がる。

「すぐ出ていくき謙也は黙って聞いちょき」

「は?」

何のことかまったくわからない謙也は立ち上がった千歳をただ見つめる。馨も何をするのか予想がつかずに千歳を見上げた。
すると。

「馨、逢った時からずっとs「スットォォォォップ!!!」

馨の手を握ろうとした千歳の手を謙也が掴んだ。再び血管の切れそうな顔で千歳を見る。

「ルール違反やでぇ千歳」

「なんば言いよっとね。ルールとか作ってなかばい」

「俺昨日めっちゃ頑張って自分に言うたよな??」

「了承してなかけんね」

ああ言えばこう言う。どうやら千歳は本気で、今ここで、馨に告おうとしているらしかった。しかし自分の告う前に千歳に告白されてはそれがもしokであったなら。告白する前に玉砕などという悲しい現実にはなりたくない。せめて正々堂々とふられたいというのが謙也の言い分だ。

「屁理屈はえぇねん。とにかく、はよ出て行きや。昼休み終わってしまうやろ」

「えー」

「えーやないわ。ほら、さっさとしい」

まるで犬か猫かを追い払うように謙也が手をふれば、これ以上は確かに時間的な問題があると感じたのか千歳はしぶしぶ、ほんとーぉに渋々と言った感じで放送室を出た。
一仕事終えたように謙也が額のかいていない汗をぬぐった時に、馨が昼休み終了五分前の放送をする為にマイクのスイッチを入れた。しかしそんなことにも気付かない謙也は今しかないと言わんばかりに勢いよく馨を見、名前を呼ぶ。

「馨ちゃん!」

「はいっ!?」

当たり前だが突然名前を呼ばれれば驚く。さらに馨は無断で千歳を放送室に入れていたこともあり罪悪感を感じていたのである。

「あんな、馨ちゃん」

「ごめんなさい謙也さん!!」

怒られるということを直感的に感じた馨は反射的に頭を下げて謝っていた。完全な勘違い。しかしそれは謙也にとっては大ダメージなのである。

「………え、」

「その、ほんま…あたし気付かんくて」

二人の思うことはまったく違うことなのだが、何故か見事に会話の内容は噛み合う。千歳を追い出したとして、結局告白することなくふられるんか、と謙也が涙ぐみそうになった時。

「ちーさんと、仲悪いんでしょう?」

馨の恐る恐る聞いた言葉に、謙也は目を丸くした。

「千歳と、俺が?」

「せやからあんな怒ったんちゃいますの…?」

「…っちゃうちゃう!!ちゅうかまず今話そうとしたこと自体千歳関係あらへんから、さっきのはほんまに気にせんでよかったんやで」

優しく優しく、それを心がけて謙也が言えば馨はようやく顔をあげて謙也を見た。そうして、

「じゃ…なんですか?」

ゆったりと聞かれた言葉に、身体中の血液が沸騰したような感覚に陥る。頭がぼーっとしそうなのを必死にはっきりさせながら謙也は馨を見つめた。

「あんな、馨ちゃん…」

「はい」

「俺、馨ちゃんのことっ」


――ドンドンドン!!!


突如放送室の扉が強く強く叩かれ、謙也の肩がびくりと跳ねた。

「なんや!?」

「謙也ぁぁぁ!!!まだ馨は渡さんでぇ!!!!」

「ざーいぜん、今えぇとこやったっちゅうんに…」

「いや、ナイスプレイばい財前」

ガチャリと放送室に入って来たのは鬼のような形相の光とそれを羽交い締めにする白石。扉を開けたのは千歳だ。

「…自分ら」

低く低く、謙也が呟く。

「えぇ加減にせんかい!!!」

「マイク入れたまんま告白劇しよぉとすんのが悪いんやないんすか?」

「そーばいそーばい」

「あ、マイク…」

そう言えば、と慌てて馨がスイッチを消す。ちょうどその時チャイムが鳴り、5限が始まったことにより全校を騒がせていた放送室での告白劇は進展なく終わることとなった。

「ほら、授業戻るでー」

「トトロば探しに行かなんけん…」

「今日逃がしたら泣くでって担任に脅されとるさかい連れて行かなあかんねん。…ほら、財前も」

「…ま、しゃーないっすね」

三人が揃って出ていくのに謙也と馨もついて行くほかない。なんとなく(謙也的に)気まずい雰囲気で、前方を歩く三人をじとりと睨んでいた謙也の服の裾を馨が引いた。

「謙也さん」

「おん?」

「部活終わったら、一緒帰りません?あたし待っとくんで」

にこりと笑いかける馨に、謙也は天にも昇る思いで頷いた。進展は、なかった訳ではないらしい。しかしこの二人がくっつくのにはまだまだ時間がかかりそうである。





―――――

はい、おーわり☆
中途半端ーとかえーとかそんなの知らないZE!!
伊織にはこれ以上は無理んりん♪
さーて次なに書くかな←




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