じゅなな
どうやらそろそろ決着をつけなければならないことに気付いたらしい謙也は火曜日を翌日に控えたお弁当事件の明くる日である月曜日に千歳に宣戦布告をすることを白石に打ち明けた。なんだかんだ言いながらやはり彼は白石大好き人間らしい。その告白を受けた白石はただ笑っていた。
火曜日、いつものお時間です。
学校も終わり放課に入った月曜日の午後。かちゃりとドアノブが回り、最近真面目に部活を行っている千歳が部室に入る。入った、瞬間にそれは起こった。
「ち、千歳!!!」
「なんね、謙也?」
謙也が叫び、千歳の隣に小春が等身大の鏡(白石が持ち込んだ私物)を持って来る。そうして謙也の隣に立っていた白石が画用紙に大きく書いた紙ちょうど鏡が反射する高さに持ち上げた。
「ぉ、俺は…」
計画は順調に進んでいるかのように思えた。
宣戦布告をすると決めたもののその場即興で千歳に言葉をぶつけることなんて出来ひん!と情けなく泣きついた謙也に白石が台本を頼み、その台本を小春が鏡写しにして謙也がそれを読み上げる。その計画は実に順調に進んでいるかのように思えた。のだが、それは本当に思えただけだったらしい。
謙也は焦っていた。
「俺、は…馨ちゃんのこと……がっ、」
普通に書いた文字を鏡に映せばそれは勿論鏡写し…逆文字になって瞳に映るのだ。それを普通に読み進めることは到底謙也に出来ることではなかった。
「………っ!!(白石…読めんことに気付いてやっ!!)」
その思考を読んだのか白石はにやりと笑い紙を裏返した。謙也はその行動を見て安堵し、そうしてそれを読む心構えをしていたのだが。…だが。
「……ナメとんのか白石ゴルァァァ!!!」
そこにかかれていたのはエクスタシーと達筆で書かれた文字と白石のちょっとした似顔絵だった。勿論鏡写しなどではないし巻いてある包帯はちゃんと左手。要するに紙に逆文字を書いたらしいので鏡写しで普通に読めるようになっているのだ。
「なんで怒鳴られなあかんねん。自分が頼んできたんやないか」
「せやけどな、せやけど…っ!エクスタシーに力いれる必要ないやろ!?どっちかっちゅうたら台本の方に力いれろや!!」
「折角色々考えてやって実行してやった俺にそない口きくとはえぇ度胸しとるやないか。今すぐ光に今まで馨ちゃんにしてきたこと全部チクったろうか?」
「すんませんっしたぁぁぁ!!!」
白石と口喧嘩は出来ても光には勝てないらしい。理由はわからないがそれが謙也なのだ。その一連を見ていた小春と千歳は苦笑、しかしその苦笑が謙也の機嫌を逆撫でした。
「千歳ぇぇ!!!」
「さっきからなんばしよっとね?」
「えぇから聞きや!俺明日…火曜日の放送当番の日に馨ちゃんに告ったる!千歳なんぞに負けへんからなぼけ!!!」
言った瞬間スピードスターは伊達じゃないと思わせる素晴らしい走りで謙也は部室を出た。今逃げたとして結局部活中に会うのだが今の彼にとってそれはどうでもいいらしい。
「…言い逃げはやったらいかんこつじゃなかと?」
「ヘタレな謙也やからしゃーないんや、許したってや」
「俺今から馨んとこ行ってもよか?」
「こない千歳が頻繁に練習来るとか珍しいさかいなぁ。来とる時は徹底的に部活参加させるっちゅうんが俺とオサムちゃんの約束やねん」
「…白石は謙也を応援しとるみたいっちゃね」
若干トーンを落とした千歳の言葉に白石は小さく苦笑した。
「謙也を応援っちゅうか、あいつがあない俺に相談してくるんも珍しい話やから、まぁ応援したりたいっちゅうんはあるけどな。別に千歳を応援してない訳やないで」
どっちにしろ最後の敵は財前やし。本気で苦笑いする白石に千歳は少しだけ安心したように息を吐いた。
「ならよか」
「ちょっとちょっと!!まさかこの小春ちゃんを忘れてるんやないでしょうね二人とも!」
「なんやまだおったんかいな」
「その見た目で存在感無さすぎばい」
くすくすと笑う白石と千歳に言い返しながらも小春はそう機嫌の悪そうな表情ではない。結局彼…女も千歳と謙也両方どちらが馨とうまくいったとして対応は何も変わらないのである。
水面下でこのように色々なことが慌ただしく起こっていることを、謙也は勿論馨でさえ知らないのだ。
―――――
だがしかし光は薄々いろんなことに気付き始めているというオチ。
一応馨の恋路だから邪魔はしたくないが相手が謙也だからな…
というのが現れその上で取る行動が前話のお弁当事件でちょろっと出たり違ったり。←
とにかく一応次で終わるから(∀)/
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