じゅ!
その夜、当たり前のように馨は白石にアドレスを聞いてメールを送った。誰に、とは言わずもがな謙也にである。新着メールの表示を見た謙也はかなり喜んだがその弾みで飼っているイグアナが部屋に逃げ出したとか違うとか。
因みにこのことを光は知らない。
火曜日、いつものお時間です。
side.謙也
『白石さんから聞きました。馨です、登録お願いします』
メールが来た。誰からて、わかるやろ自分馬鹿やないん?馨ちゃんからや。来たのがわかった瞬間、返信。スピードスターはこないとこでもスピードスターや。
『登録したで!これからよろしゅうな』
にこマーク。当たり障りのない返事やし、おん。えぇやろ。送信、と。
そんまま携帯片手に雑誌読みよったらすぐに返信がきた。さすが財前の双子っちゅうかなんちゅうか。
『返信来て安心しました。よろしゅうお願いします』
安心しました?なんやろ、俺メール返信せんような奴に見えるんやろか、うわなんやちょいショック受けとる自分がおんで。ちゅうか会話のネタないねん。まぁあれやな。あんま長く続けても迷惑やろうしな。
『返信はちゃんとするでー(笑)
ほな、また部活見に来てや!おやすみ』
考えるんも早ければ打つんも早い。白石的に言うならエクスタシーやで、俺。送信して今度は返信くるのをまっとったらものの一分もせん内に返信が来た。どんだけ早いねん。馨ちゃんも俺に負けず劣らずスピードスターやな!
『喜んで見に行きます。おやすみなさい』
…なんでやろ。なんで普通の文面やのに馨ちゃんからのメールはこない可愛く思えるんやろ。画面からふわふわしとる雰囲気がぐわーって来る気がする。うわ、俺変態みたいやな。ちゅうかなんでこない馨ちゃんのこと気に入っとるんやろ。
… … … … …
「それは恋やな」
次の日とりあえず白石にありのままを話したらそないこと言われた。びびるわ。
「いや、ちゃうわ」
「なんでやねん、それを恋と呼ばんかったら何て言うつもりなん?」
「……可愛ぇ後輩?」
返したらなんやごっつでかいため息つかれて哀れそうな目で見られて。なんやその目。そない目で俺を見らんといてや!
「まぁえぇわ。それで、メールしよるんやろ?どない感じ?」
「しよらん」
「…ん?」
「せやから、メールしよらん」
「……………」
あ、またため息つかれてしもた。なんやねん白石のばかやろ。
「アドレスGETしたらとりあえずメールせんかい。仲良ぅなりたないん?」
「そないこと言うても…用事ないんやもん」
「は?謙也お前用事なかったら誰にもメールせぇへんの?」
「せんやろ普通」
真面目に返した。ちゅうかそれが普通やないん?用事ないんにメールしたらただの迷惑やろ。
「………そうやな、自分そういう奴やったな」
「おん」
なんや貶された気ぃするけどまぁえぇとしとこ。頷いて返すと白石は少し考えてからもっかい俺を見た。なんとなく、言葉に出来ひん気迫を感じる。
「馨ちゃんとメールしたないん?」
「したい」
「せやったら、それが用事や」
「…は?」
「馨ちゃんとメールしたい思うた。それが用事でえぇやないか、メールせんかい」
「いやいやいやいや」
俺はそれでえぇかもしれんけどっちゅうかえぇんやけど馨ちゃんにしてみたらただの迷惑メールに過ぎんやろ。そないことして嫌われたらどうすんねん!
「あんま言うこと聞かんと携帯取り上げ…あれぇなんでやろ、謙也の携帯が俺の左手の中に」
「おまっ!?いつの間に!?!?」
「ほんでもって馨ちゃんにメール作成してもうたわー。内容どないしよか?」
「ちょぉまじでやめんかぼけ!!」
「うわ、ちょ、バランス崩すやろ…ってうぉわぁ!!?」
「あほぉぉぉぉ!!!」
椅子斜めにして座っとるからそうなるんや!危ないっていっつもいっつも言いよるやないか!ってちゃうねん今はそないことより俺の携帯。弾みで飛んでった携帯を拾い上げて中を見ると送信中の画面。慌てて電源ボタン連打したけど、遅かった。
― 送信完了 ―
「………終わった」
俺の淡い恋の破壊完了や。空メ送信とか、どう考えても嫌われフラグ立ったやろ。とりあえずへらへら笑っとる白石を睨んでみた。
―――――
眠い。←
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