きゅう





その後特に何もなく普通に練習を終えたテニス部面々。馨も飽きることなく最後まで練習を見ていたので特に何も問題は起こらなかった。
しかし、問題が起こるのはこれからなのである。





火曜日、いつものお時間です。





馨は着替えも終え、制服でコートから出てくるテニス部員の中から光と謙也の姿を探していた。氷帝のように多大な数の部員がいる訳ではないが、四天宝寺もそれなりの強豪校であるが故にそれなりの部員数である。それが1つしかない出入口から出てくるとあるのだから努力を要するのだ。

「あ、謙也さん」

「馨ちゃん、携帯すぐ出る?」

自分の携帯片手に慌ててそう言う謙也に馨は不思議そうに首を傾げながらポケットの中から携帯を出した。

「赤外線でいいですか?」

「えぇでえぇで、赤外線どこや?ここ?」

「いや、そないとこ違いますけど…」

何故か謙也はディスプレイに向かって赤外線を送信している。慌てる謙也によくついて行けずに馨は戸惑うばかりで。しかし彼が慌てるのにも理由はあるのだ。

「はよせな、財前が来んねん!」

「光が?ちゅうか、何かに書いてくれとったら後で直で入力してメール送りますよ?」

「そ、その手があったか!!ほないくで馨ちゃん」

「は?」

「いくで」の意味がよくわからない。馨は暗にアドレスをメモって渡せと言ったつもりなのだが生憎謙也には伝わらなかったらしい。

「speed-star.0317にドコモのやつや!」

「や、あの、え?」

覚えられる訳がないであろう。さすがスピードスターと言えばいいのか、かなりの早口である。

「せやからspeed-star.0317やで!」

「……えっと、光に聞きますね」

「あかぁぁぁん!財前なんかに聞いてみぃ、俺一発であの世行きや…っ!!」

「じ、じゃあ白石さんに聞いてみますね」

「白石の知っとるん!?」

「昼休み騒動のあとに交換したんですわ」

「…あ、あーな、おん。せやったら…白石に聞いてや」

「わかりました」

にこりと笑い頷く馨に謙也も複雑そうな笑みで頷く。どうやら白石に先を越されたというのがえらくぐっさり来ているらしい。

「馨ー、帰んで…て、なんで謙也さんがおんねん」

「光」

「おんねんっておま……もうえぇ。どーせ俺とか先輩にも思われんような可哀想な奴なんや。えぇねん、そないやから白石にも先越されるし財前に怯えなあかんねん」

「…なんやわからんっすけど、とりあえずきもいっすわ」

「もうえぇねん、財前なんや白石なんや嫌いやぁぁぁぁ!!」

「ぇ、あの謙也さん!!?」

突如目元を拭いながら走り出した謙也に慌てて馨が声をかけるが、そこはさすがスピードスターと言うだけはあり速い。既に背中も見えなくなっていた。

「………なんやねんあの人」

「わからんけど…」

「まぁえぇわ。帰んで、馨」

「おん」

謙也の去って行った方向を心配そうに見ながら正門に向かう。どうやら彼は裏門の方に向かったらしかった。凄まじい砂煙の中、やはりどこか心配そうに顔を曇らせる馨に光も表情を暗くする。

(馨にこない顔さして……謙也覚えとき)

謙也の背筋に悪寒が走ったのは言うまでもない。





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ぐだりーのまっくす
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