じゅんあい



「ねえザキ」
「あ?」
「エッチ、しないの」
「ブッ」

彼の名前は山崎弘。
髪なんか染めちゃって粋がってるけど、実のところはただのヘタレ。
人相悪いくせして結構優しいし。
軽々しい態度を取るから女に慣れてるのかと思いきや、全くの正反対、純粋純情も行き過ぎればウザったいくらい。
まあそれもそうか、彼、別にモテないし。
でも私はそんな彼が好きだし、彼も私を好いているという自信はある。

「おまっ、お前は何言ってんだ!なぁ!?」
「だってもう付き合って五年だよ?私たち。もう中一から付き合ってんだよ」
「だ、だからって…」

高校二年生。
この年頃になったら、やっぱりそういうことに興味を持つのも当たり前だと思うんだよね。
周りの子たちを見てると、付き合ってヤって別れて を繰り返すような人も多いけど…
違うじゃん、私たちは。

「ザキは私としたくないの、エッチ」

イマドキ中学一年生から付き合って、同んなじ高校行こうねなんて行ってホントにそうなって、いまだに清いお付き合いとか。
スゴイよね。

「ねえ」
「し…したくねーワケねぇだろっ!」

そうだよね。
だって、私何回かザキのおちんちんが自己主張してるの見たことあるもん。
そのたんびに必死に隠してたけど、残念ながら私は知ってたんだよ、ごめんね。
でもだからこそ、今回こうして問い詰めることが出来たわけで。
彼が自分から したい だなんて言えるタイプじゃないのを私は知ってるし、何より私だって、彼との深い繋がりを求めているから。

「んなこと言わせんなよ、マジ…ああーもう、ハズ……」

真っ赤な顔を利き手で覆って隠す姿は、やっぱりなんだか可愛い。
そうだよね。
だって私たち、手を繋ぐのにも半年かかって、チューをするのにはもう半年かかったもんね。
苦労して克服したそれだって、未だに数少ないイベントだよ。
このヘタレさが嫌になりそうになった時もあったけど、私はずっと彼を好きでいられている。

「ねー、ザキ聞いて」
「…なんだよ」
「こっち向いて」
「いっ…な、なにすんだ馬鹿!」
「うん、向いたね?一回しか言わないからよく聞いててね」
「…おう」

何故なら彼はとても純粋に、とことんまで優しいから。
寒い日は無理やりにでも私の手をとって自分のポケットに入れ、私が体調を崩したなら、部活後どんなに疲れていてもお見舞いにくるような。
心配性で過保護で、とっても不器用。
でもその行動の全部は、優しさからきているんだって、私は知ってるから。

「私も、ザキとしたいよ、エッチ」

私がそう言うと、顔を真っ赤にしたまま俯いて、彼は私の右手を握った。

「…お前がイヤじゃねーなら、その、なんだ…明日も俺ん家に来いよ」

ああもう、可愛いなぁ。
愛おしくなって抱きしめれば、彼もまた、私の背中に腕を回して抱き返してくれる。

明日、また、来よう。





州川、最近ザキが愛しいです
20140222



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