昼休憩〈Yummy!〉
午前中の授業も終わり、昼になった。
空山はあの後から、休み時間になっても変な群がられ方はしなくなった。
良くも悪くも、俺の牽制が効いたということだろう。
「晶ちゃーん! 一緒にお昼、食べよう!」
「お茶子ちゃん。もちろんだよ。誘ってくれてありがとう」
「俺たちもご一緒してもいいか?」
「うんうん」
「飯田くん、緑谷くん。もちろんだよ」
俺は興味ねーやつの名前覚えんのが苦手だから、あいつらの名前をこの短時間で覚えてる空山には感心した。
たぶん、今は名前覚えるために確認の意味も含めて呼んでんだろーな。
ほぼ全員が食堂で食うもんだから、移動が大人数になって、俺はこの時間が嫌いだ。
「爆豪〜! お前、いいのか?」
アホ面が話しかけてくる。
「なにがだよ」
「空山ちゃんだよ! 飯田や緑谷に盗られちまうかもよ?」
「は? んだよ、盗られるって」
「……やだ! この子自分の気持ちに気づいてないの!? 聞きました奥さん!? ねえちょっと!」
クソ髪のところに駆け寄っていくアホ面。なんかよくわかんねーけどうぜーな。
俺も食堂に行くとする。
移動の際にこいつら二人が着いてくんのがうぜえ。
*****
お茶子ちゃんが飯田くんと緑谷くんを引きつれてお昼に誘ってくれたので、一緒に食堂に来た。
メニューが豊富すぎてなにを頼んだらいいかわからない。
私が迷っていると、轟くんが声をかけてきてくれる。
「迷ってんのか」
「あ、うん……いっぱいありすぎて。おすすめとかあるかな」
「そばだな」
「そば」
「シンプルなそばでも、ここは手打ちだから、うまい」
「そうなんだ。じゃあそばにしようかな」
「ああ」
轟くんのイチオシはそばらしい。
ひとのおすすめは聞いておくのが吉だと思うので、素直にざるそばを注文する。特に好き嫌いもないしね。
「晶ちゃん、おそばにしたんだ!」
「うん。轟くんのおすすめで」
お茶子ちゃんは大盛ハンバーグ丼を頼んだみたいだった。
意外。結構がっつり食べるんだなあ。
この細い体によくこんな大盛が入るもんだ、と感心する。
そんな会話をしていると、後ろから爆豪くんが話しかけてくる。
あ、後ろにいたのか……人が多くて全然わからなかった。
「半分野郎のおすすめだと?」
「え、あ、うん。半分野郎?」
たぶん轟くんのことを言っているのはわかった。
「なんであいつに聞いたんだよ」
「……近くにいたから?」
「近くにいたらだれでもよかったんか」
「そんな詰め方されると思ってなかったや」
「で、どうなんだよ」
「まあ、はい、近くにいたひとに聞ければよかった点はあるかも……」
私がそういうと、爆豪くんは片眉をぴくりと上げて言った。
「俺に聞けやクソ」
私が固まっていると、爆豪くんは舌打ちをして切島くんや上鳴くんのいる後ろの席に座りなおした。
私も席につくと、目の前に座っている飯田くんや緑谷くん、隣のお茶子ちゃんがなんだか笑顔になっていた。
「ど、どうしたの」
「んーん! なんもないよ! なんもない! ふふふ」
お茶子ちゃんが言うと、うんうんと二人もうなずいている。
不思議に思いながらも、おそばに口をつける。
うわ、ほんとだ、轟くんの言った通り、おいしい!
これはあとでお礼を言わなきゃな。
そして明日は、爆豪くんにおすすめメニューを聞いてみよう。
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