集中講義〈Study Meeting〉



 期末テストを目前にして、私は焦っていた。

 なにせ、この前転校してきたばかりなのだから。
 転校してきたばかり、つまり、勉強に多大な遅れがあるということで……

 普通の教科はまだしも、ヒーロー基礎学やヒーロー関係の法律学なんかは厳しい。

 林間合宿に行けるか行けないかということもあり、みんな成績のことで騒いでいる中、私は一人絶望していた。

「テメェ、勉強は大丈夫なんかよ」

 机に突っ伏して頭を抱えていると、爆豪くんが声をかけてくる。
 さっき切島くんに教えるとか言ってるのが聴こえたけど……

「無理です」
「なんで敬語だよ」
「教えてください」
「いいけど」
「ほんとに!?」
「どうせあのクソ髪にも教えんだ。一人も二人も変わんねー」

 あ、ありがたすぎる……!
 ノリでもなんでもお願いしてみるもんだなあ。

「爆豪お前ホント空山んこと気にかけてんのな」
「あ!? たりめーだろうが!」
「そりゃそうだよなー。だって付き合ってんだもんな」

 切島くんに改めてそう言われると、なんだか照れてくる。

 私たちはもう、あの学校前での一件から、クラス中学校中で噂の的になっている。
 いい餌というか、なんというか。
 いい感じにおもちゃにされている感じもする。

「あれ、待て待て俺邪魔じゃね!?」
「あ? 別に」
「うん。っていうか、切島くんが先に約束したんだから、どっちかって言うと私の方が邪魔だよ」
「はァ!? どっちも邪魔じゃねーわ!」
「「爆豪(くん)……!!」」

 なんやかんやで優しいんだから。

 というわけで、週末は爆豪くんの集中講義が行われることになったとさ。


*****


 なんやかんやと忙しくしていると、あっという間に週末がやってきた。
 爆豪が勉強を俺と空山に教えてくれるってんで、ファミレスに集まることになった。

「お待たせ! って二人して早くねーか!?」
「予定の時間より早く来ちゃうの、くせなの」
「爆豪もはえーよ!」
「俺もくせだ」
「お前空山がいるときの聞き分けのよさすご「黙れ!」……ウィス」

 ファミレスに入って、案内された席に腰かける。
 爆豪の向かいには俺、隣に空山が座った。

「仲いいなあオイ」
「うるせーよ。さっさとやってさっさと終わらせんぞ!」

 なんか最近俺この二人推しだわ。
 見ててナチュラル距離感近いのとかなんか可愛いんだよな。

 羨ましいところもありつつな!
 俺も青春してえよ!
 ま、強くなるのが最優先なんだけどな!

「爆豪くん、この法律のとこなんだけど……」
「あ? あー、そこは……」

 うん、距離が近い!
 距離が近くてよろしい!
 顔ちっっっか!

 これ空山が振り向いたらちゅーしちゃうだろ!

「オイ、クソ髪! テメェ、サボってんなや! やれ!」
「ウィス!」
「爆豪くん、ココファミレス、怒鳴るのダメ」
「わかってるっての!」
「はい怒鳴りポイントプラス一点!」
「んだと!?」

 爆豪が翻弄されてらあ……人間相性ってのがかなりあんのかもな。
 まあ俺もクラスん中じゃ相当仲いい方だけどよ、爆豪とは。

 飲み物がなくなったのでドリンクバーに取りに行く。

「あ、空山もねーじゃん。俺取り行くからコップ貸せよ。なにがいい?」
「はァ!? テメェらは勉強あんだろーが! 貸せ! 俺が取りに行く!」
「お、マジか。頼むわ」
「パシられる爆豪くんの図」
「うるせー!」
「俺コーラ」
「私メロンソーダ」

 爆豪がかわりに取りに行ってくれることになった。
 ので、この隙に聞いてみることにした。

「空山、お前いつから爆豪と付き合ったんだ? すげえよ、爆豪が落ちるなんて」
「私が色目使ったみたいになってない? 使ってないからね? まあ、噂にはしないでほしんだけど、ぶっちゃけ初日だよ」
「初日!?」
「うん。放課後から」
「スピード婚ならぬスピード交際じゃねーか」
「芸能人でもいたよね0日結婚とか」
「いたいた」

 初日……放課後……
 そういや、ツラ貸せとか言われてたな。

 っていうことは……

「爆豪お前ェ! お前から付き合ってくださいって言ったのか!?」
「は!? ふざけんな! 言ってねーわ!」

 ちょうど帰ってきた爆豪に言うと否定されてしまった。

「じゃあなんだよ、どうやって付き合ったんだよ」
「はいお付き合いしましょうねーだけでお付き合いが始まるかボケ」
「切島くん。世の中そんなわかりやすいことだけじゃないんだよ」
「言葉なく付き合ったんならお前ら二人意外とオトナだわ」
「意外とってなんだ!」

 俺が思ったよりも、二人は進んだ考えを持っているらしかった。

「そっかそっか」

 なんか、もっと推せるな。

 その後は、「ぐちゃぐちゃ言ってねーで勉強しやがれ」と喝を入れられて、俺も空山もしごかれましたとさ。



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