うるさい、この間抜けめ。



「古橋さん古橋さん古橋さん」
「………」
「古橋さん古橋さん古はしゅしゃっ」
「噛むなよ」
「言いづらいんですよ、古橋さんて!あっでも結婚したら私も古橋なまえになるんですよね!?」

ちょっと待て。
なんで結婚する前提なんだ?

「あああどうしよう、自分の名前を名乗るのが一苦労って…」
「安心しろ、夫婦別姓制度がある」
「あっそうですね!でも私 やっぱり古橋になりたいです!うへへへ」
「黙れ」
「いたいっ」

天罰だ。
ほら、なんだかんだ言ってみょうじ、お前、俺の話聞いてないだろう。
あれ気付かないってあり得ないだろ、全くいい加減にしろよ。
もう二度と乗っかってやらない。

「ザキせんぱい、私には何が足りないんでしょうか…こんなにアタックしてるのに、挙句殴られました…」
「あ?あぁー…色気とか?」
「ですよね!それしか無いですよね!色気かぁぁー、ううーん!泣きそうです!」
「あと落ち着きな」
「おちゅちゅきって何ですか!?」

今のお前に最も足りてないものだから、多分、到底理解出来ないだろうな。

「とりあえず深呼吸しろなまえ」
「ひっひっふー」
「それラマーズ法」
「ふう…それで聞きたいんですがザキせんぱい、色気とは一体何でしょう?」

みょうじにはこの先持ち合わせることすら叶わないものだよ。

「あ!?ええー…あー…まあ、とりあえず、ボンッキュッボンが大前提じゃねえの」
「私キュッキュッキュッなんですけど!?ねえ!?」
「は?いや別にケツはキュッじゃなくね?お前。結構いいケツだと思うけど」
「おっぱいは?」
「お察し」
「うわぁぁん!ありますもん!ほらぁ!」

胸を張り出して山崎に見せ付けているが、いや、まずそういうことをするなよ。
誰にでもそういうことをする女だと思われてもいいのか?
天然も過ぎると間抜けだぞ。

「おいみょうじ、やめろ、そして黙れ」
「だって古橋さん!」
「いいからやめろ」

ああ、横でニヤつく山崎が鬱陶しい。

「あれ?なんか怒ってます?ごめんなさい、少し騒ぎすぎました…」

頭を下げてくるみょうじ。
俺が言いたいのはそういうことじゃないというのに。

「うるさい、この間抜けめ」

今更謝ってどうなるわけでもない。
少しだけ悔やめ、馬鹿女。

20140311



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