しつこい、マジで。
「古橋さん古橋さん古橋さん」
「………」
「ねえ聞いてますか古橋さんねえってばねえねえねえ」
「…なんだ」
「えへへぇー、好きです」
そうか。
としか言いようが無い。
「きゃー言っちゃった」
「毎日聞いているが」
「あっそうですね、訂正します、今日も言っちゃった」
この見るからに馬鹿丸出しな女はみょうじなまえと言って、男子バスケ部のマネージャーをしている一年生だ。
つまるところ、俺の後輩。
「おアツイねーお二人さん」
いつもいつもこんな調子で接してくるために、からかってくる者も少なくない。
例えば瀬戸であったり原であったり、挙句の果てには花宮までもが皮肉を込めて来たりもする。
勘弁して欲しい。
「黙れ瀬戸」
「はは、満更でもないくせに」
「そんなことはないぞ、断じて」
「へえ」
「本当に」
だって、考えてもみろ。
「古橋さん古橋さん、好きです」
「そうか」
「聞いてますか?私 古橋さんのこと好きなんですよ」
「聞いているが」
「あぁぁんもう好き!」
「やめろ抱きつくな」
毎日こんな目に合ってからと言うもの。
そりゃ、疲れもするさ。
「えー酷いですよう!いいじゃないですか、ちょっとくらい!」
「痛いんだよ」
「えっすいません緩めます」
「みょうじの頭がな」
「わぁ」
「だから離せ」
本来、人に好かれるというのは、誰しもが多少なりとは嬉しく感じるものだろう。
それは俺だって一緒だ。
初めてみょうじに好きだと言われた時は当然嬉しかったし、こんな俺でも好いてくれる奇特な奴がいるんだな と感心すらしたものだ。
しかし、みょうじ相手じゃそんな感情はすぐに埋れてしまって。
「いやです」
「離せ」
「いやです」
「いい加減にしろ」
「良い加減に好きです古橋さん」
だって、こいつ、押してダメなら引いてみろ って言葉を知らないんだから。
好き好き言うのは別に構わないが、好きだからどうしたんだって。
好きだと言ってどうしたいんだって。
こいつの場合そればっかりで、何をしたいのかもイマイチよく分からないし。
「アイ!ラブ!ユー!!」
まして付き合ってくれと言う訳でもないのだから、本当に謎だ。
「しつこい、マジで。」
というか、そんな言われると軽く引く。
20140311
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