カカオ100%



「ねー」
「………」
「ねえねえ花宮ぁ」
「……………」
「ねー聞いてる花宮?ねえねえねえねえ」
「…んだようるせぇな」

彼の名前は花宮真。
霧崎第一高校バスケ部の主将兼監督という、とんでもない奴である。
彼はとても賢くてゲスでとんでもなく有能でそして堪らないくらいのゲスだ。
一応言っておくけどこれは褒めている。
背は高いし、イケメンだし。
文句の付けどころと言えばこの眉毛くらいかな。

「それ美味しいの?」
「…はあ?」
「いやだから、それ、そのほとんどカカオ豆食ってますよみたいな木炭系洋菓子もどき」

こう言うと、意外にも花宮は怒ることはせず、むしろ呆れたようにため息をついている。

「お前、喫煙者にタバコは美味いかとか聞くタイプだろ」
「うんまぁ、聞いたこともあるけど、あれは煙の匂いを嗅ぐ限り美味しくなさそうなのは明らかだよね。癖になってるからやめらんないだけ、もしくは格好付けからの惰性でしょ。あっ、もしかして花宮のそれも格好付けが始まり?いるよねー、コーヒーはブラックしか飲みませんアピールする奴とか」

が、これには流石に、花宮の特徴的な麻呂眉が歪められた。
その顔イケメン。
麻呂眉でなければ尚更。

「うぜえし、ちげえよ、バァカ」
「いただきました本日のバーカ」
「死ねよクソ」
「ひどいー」
「多少挫けてから弱音を吐けバカ」
「あ、それで、どうなのさ。美味しいの?」

話を本題に戻す。
全く、花宮のおかげで盛大に話の方向がずれてしまったのだよ。

「そんなに気になるのか」
「そうでもない」
「じゃあ聞くな」
「そんなに教えたくないの?」
「苛ついてきた。いや、俺はただお前との会話を楽しみたくないだけだな。…ああそうだ、おい、口開けろクズ」
「んん?むがっ」
「…どうだ」

なんでちょっと恐る恐る聞くんだ。

「…ゲロマズ。クレヨン齧ってるみたい、最悪、牛乳くれ。ぐえっ、ちょ、何も蹴ることは…」
「うるせえ、この、分からず屋」
「いたいー」
「なにしてんだお前らは」
「健ちゃんたすけてーもう古橋でもいいからぁー」



20140114



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