冬休み前の終業式



「今日で終業式。皆の顔も部活でしか拝めなくなるね」
「じゃあ毎日部活にいそしめばなまえの顔を拝めるというわけか」
「古橋ぶれねえな」
「私はそこまで康次郎の顔見たくはないかな」
「なまえもなかなか酷いな」
「おいお前ら人の机の周りでなにしてんだ」
「あ、花宮おはよー」
「集まるなら健太郎の机にしろよ」
「えー別にいいじゃん」
「花宮のけち」
「よくねえしけちでもねえ。つーか一哉、お前椅子から降りろ邪魔だ」
「はいはい」
「はいは一回って言ってるだろうが」
「ママかよ」
「だれがママだ」
「なあ、なんか今日ザキ元気なくね?」
「あ? え? いや、別にそんな……」
「あーなまえと会えなくなっちゃうもんね」
「なあにザキ私に会えなくなるの寂しいの? もー! かーわーいーいー」
「ちげえよ!」
「俺もなまえと会えなくなるのは寂しい。かわいいか?」
「なにその質問謎すぎるんだけど」
「学校ではなまえはみんなのもの……なんて考えてたけど、康次郎お前まだまだ個人的になまえのこと諦めてねえだろ」
「ああ」
「油断も隙もねえな」
「誉め言葉だな」
「ドヤってんじゃねーよバァカ」
「なに、花宮嫉妬?」
「健太郎、お前なあ……お前までそっち側に行ったらだれが収めるんだよこの場を」
「えー花宮妬いてるの? かーわーうぃーうぃー」
「今日のなまえウザくね?」
「一哉酷い!」

 ――キーンコーンカーンコーン……

「ほら、予鈴鳴ったぞ。お前ら早く帰れ」
「はーい」
「また捕らわれた宇宙人にされるのか私……やだなあ……」
「全校集会でいつもなってるだろ」
「たしかに」

(体育館)

「ねえねえなまえちゃん、花宮くんと付き合ってるってホント?」
「さ、さ、堺ちゃん!? なにを言ってるの!? てかもうちょい声小さくして!」
「めちゃくちゃ噂になってるよ」
「し、知ってる……」
「それでそれで、どうなの?」
「それ今花宮が隣にいる状態で訊く?」
「二人に訊いた方が確実でしょ!」
「う……」
「堺さん、だっけ? 君の言う通り、僕たちは付き合ってるよ」
「ちょっ花宮!」
「わー! すごい! 花宮くんもなまえちゃんも文武両道って感じだし、美男美女でお似合いだね!」
「堺ちゃん声」
「あっごめん」
「まわりがざわつき始めたね」
「笑ってんじゃないよ花宮。あと猫かぶりキモチワルイです」
「えーみなさん、静粛に」
「あ、校長」
「じゃ、続きは後でね堺ちゃん」
「うん、楽しみにしてる」

 このあといろいろ絞り取るように聞き出されてクラスの女子に囲まれた。



20200412



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