カラオケに行く



カラオケ。
部活をしている者は中々来ることの出来ない、まさに聖地とも呼ぶべき場所。

「久々だねぇカラオケ!うわ、うわぁぁやばい、テンション上がってきたぁぁ」

部活が早く終わる日だったので、今日は偶然寄ることが出来た。
短い時間ではあるが十分楽しめるはずだ。
何よりも大事なのは、みんなで来たという事実なのだから。

「るっさいんだけどなまえー」
「じゃあ私CHE.R.RYいれるわ!」
「おいなまえ、俺Blurry入れといてくれ」
「おっけぇ、てかしょっぱなからPuddle of Muddとか花宮どんだけ?」
「あっ!ザキに愛唄と、あと俺にBest Friend's Girlも入れといて〜」
「ちょっ原!何勝手に言ってんだ!」
「へー、ザキGReeeeN歌うんだ」
「いや歌わねーよ!」
「もー入れちゃったから仕方ないね」
「ナイスなまえ〜」
「ああ、じゃあ俺はB'zから適当に一曲」
「健ちゃんB'z好きだね、イチブトゼンブでいい?」
「いいよ、さすがなまえわかってる」
「え、何が?」
「最近のブームなんだよ」
「うっそ、当てちゃった?ヤバイね以心伝心じゃん結婚する?」
「結婚はしない」

いつものように盛大に振られたところで、一曲目がかかる。
恋しちゃったんだ たぶん 気づいてないでしょう、だなんてなまえの口から言われてからというもの、思わず咳き込む者が幾人か。
花宮は初っ端から洋楽だし、山崎に至ってはあまりに意外すぎるGReeeeN。
いや、純愛という意味では、有る意味ピッタリかもしれない。
原は原で、ラブソングとは。
優しい声質にピッタリである。

「誰よりも好きなのに 誰も知らない
my love to you
君だけを見ているよ だけど
you're my best friend's girl」

しかし、この選曲は無かったのではないかと、その場にいる者のうち勘のいい数人は同じことを思った。
いや、実際のところ原が そう であるだなんて誰も聞いたことは無いし、彼が そう であるのかは、誰も察しがつかないのだが。
だからこそ と深読みしてしまうような気もして、特に花宮、彼は今自分の疑りの深さを恨めしく思った。
瀬戸に至っては、毎度のことではあるのだが、この初めの一曲を歌ってからは聞き専門になってしまうので、みんな正座をして心して聞いていた。
普通に上手いというのに、勿体無いものだ。
そうして、それから二周ほどして、花宮が古橋がまだ一曲も歌っていないことに気が付く。

「康次郎、お前は何か入れないのか」
「カラオケに来ると、いつもなまえと原と花宮がマイクを離さないだろ」
「マイク渡したって古橋歌わないじゃん」
「たまには歌うぞ」
「じゃ、何入れる?」
「ジュリアに傷心」
「チェッカーズかよ!しかもハートブレイクって、お前トシ幾つ?」
「17だな」
「そーゆーことじゃねぇよ!」
「ジュリアにハートブレイクって康次郎…ちょ、じゃあ私あゝ無情歌うわ!」
「お前もふりーよなまえ!!」

古橋のまさかの選曲に、一同爆笑。
これは仕方が無い。
そりゃハートブレイク・サタデーナイトだからね、俺たち都会で大事な何かを無くしちまったからね。
全くもって仕方が無いことだ。

「ol' my my my my ジュリア」
「ぎゃっはっはっはっは!!!」
「ヒーッ、ちょっと康次郎やめっ、お、お腹痛い!」
「いや康次郎、真顔でマイマイジュリアはねえよ、マジで…ふはっ」
「でも微妙に似合うな、ぶっ、くく…」
「そんなに笑わなくても。ああ、二番知らないから一番だけな」

となんやかんやと盛り上がり、瀬戸によるリクエストで花宮のLOVE PHAOTOMが炸裂したりと、非常に素晴らしいことになった。
つくづく何でも出来る男だ。
残り時間もおよそあと十分となり、次の曲で終わりかな、という話になったところだった。
画面に現れたのは、黒毛和牛上塩タン焼735円 という文字。
なまえと瀬戸を抜いた一同は首を傾げた。
この曲は一体なんなのだ と。

「なまえ、またこれ?」
「え?うん、今日の締めはこれって決めてたんだよね」
「…ハァ」

ため息をつく瀬戸を不思議に思いながらも、曲は始まる。

「だぁいすきよ
もっと もっと あたしを愛して
だぁいすきよ
あなたと1つになれるのなら
こんな幸せはないわ…」

この日再確認できたことは、なまえが本当にあざとい奴だと言うことだった。



あざとさは血のせい←高尾
霧崎でカラオケ というリク(静様)
※歌詞引用※宣伝兼
20140218



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