見たくないけど



「原くん、ずっと前から好きでした。私と付き合ってください」

うわ。
うわ…うわあぁぁぁ……

「ゴメン、俺、今カノジョとかいらないんだよね」
「っそんな」
「じゃ、そーゆーことで」

ヤバイ。
これは確信を持って言える、ヤバイ。
初めて他人の…しかも毎日顔を合わせなくてはならない、原一哉という男の告白現場に出くわしてしまった。
これは、マズイ。
非常にマズイ。
狙ってやったことでないにせよ、見ていたのがバレたら、何かよくわからないけど、必ず面倒なことになるに違いない!

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

女の子が叫ぶ。
うわ、よく見たらめっちゃ可愛い子じゃないのこれ…
一哉なんで断った、頭おかしいんか。
いや確か女バスの子だっけなぁ、これ。
ていうか一先ず隠れなきゃ。
いや、まあ、よく考えたらこんな階段の踊り場なんかで告ってる方にも問題はあるんだけどさ。
それでも今私に出来る、私が全力でやるべきことと言えば、一哉に見つかる前に隠れることで間違いはないだろう。

「いやぁ、人が待ってるからさ」

女の子にそう答えた一哉が、私のいる階段下側に身体を向ける。
ヤバイ…ヤバイ。
これはバレる。
隠れてもバレる。
今からじゃどう考えたって…

「ね、なまえ」

ってゆーか、バレてた。
ニッコリ口元に笑みを浮かべた一哉は、階段下から見上げると、その前髪の下の目が薄っすらと覗けて。
くっそ、ローアングルからでもイケメンはどうあがいたってイケメンにしかなれないってことが分かってしまった。
悔しい。
一哉の言葉に女の子が慌てて階段下を覗きこんできて、目を見開いて顔を真っ赤にした。
そして、すぐに口を一文字に強く結んで、眉を寄せて私を睨みつけてくる。
怖いからそういうの。

「じゃ、行こっかなまえ」
「え、ちょっ…」

あああもう、なぜ、なぜここで手を取る!?
完璧、ありもしないことで勘違いされるだろっ!!
アホか、アホなのか一哉。
いや知ってたけどさ。

「いやー助かった。なんかしつこそうだったしなまえ使っちった、メンゴメンゴ」
「メンゴじゃなくて、これ、絶対私恨まれたよ」

ただでさえ、最近は女バスに嫌われてるっぽいのに。
この間の体育の時もそうだったけど、地味に嫌がらせとかあるんだよ、ねえ。
そんなの教えてないから仕方ないとは思うけどさ、もうちょっと考えてほしいよね。
そんな思いをこめて私が全力で睨んでいると、一哉は気が付いたようで、握っていた手を離して、それを頭の上に持ってきた。
なに。
私はそんなので誤魔化されるような軽い女じゃあ…

「仮にさ、恨まれて何かされたら、俺に言えばいーじゃん」

誤魔化された。

「ね、それで解決」

そう笑われると私も弱い。
階段の下段から見上げて来る一哉は、髪が乱れて、整った目元が露出している。
これは卑怯だ。

「…バッカじゃないの」
「うわ、なまえ照れるとかめっちゃレアなんですけど」
「写メ撮んな!バカ!」
「かんわいー」
「死ねばいい、うんそうだ、死ねばいいんだよ!!消せえっ!」
「やーだよっと」


原ちゃんがかっこいいの というリク(おみそ様)
かっこいい が分からないです
20140218



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